研究課題/領域番号 |
25380775
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
松岡 洋子 東京家政大学, 人文学部, 准教授 (70573294)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 在宅24時間ケア / エイジング・イン・プレイス / 地域居住 / アウトカム評価 / デンマーク / イギリス / オランダ |
研究概要 |
デンマークの在宅24時間ケア利用者の地域居住アウトカムとして、在宅24時間ケアの利用終結理由を調べた。まず、信頼性を高めるための全国平均値では、4自治体より返答があり、「死亡41.2%、施設入所29.3%、回復20.4%、引越し8.8%、その他0.3%」という結果を得た。特定自治体X市(人口3.6万人)に絞り込んだ結果は、「死亡55.8%、施設入所28.4%、回復13.7%、引越し4.2%、その他2.1%」であった。全国平均とそれほど大きな差はなく、信頼性のある数値が得られた。死亡による終結率(=エイジング・イン・プレイス率)は高齢者住宅と比べて低いが、相対的には高いレベルであると判断できる。X市では95名の終結者がいたが、死亡(53名、名を略す)ではガン(20)、脳卒中(6)、転倒・老衰(6)、肺炎(4)などの順であった。施設入所(23)は身体的理由(11)と認知症(11)が半々で、在宅では老化に伴う身体機能の衰えを支えるのは困難であることが明らかとなった。 今回「回復20.4%(全国)、13.7%(X市)」というアウトカムがあったのは想定外であり、デンマークの在宅ケアがリハビリに力を入れていることが確認できた。他国でも着目する必要がある。また、4名の看護師・介護士へのインタビュー結果では、促進要因として「何があっても大丈夫という安心感を与える」「精神的支援者としての家族の存在」「24時間の巡回体制」という因子が抽出された。阻害要因としては、「身体的・精神的衰え」「重度の認知症」との意見が主流を占めた。アウトカムに影響を与える因子としては、今回とくに医療的ショートステイの存在(X市)などが注目すべきものとしてクローズアップされた。また、本人の資源として、友人、家族、興味、役割、ネットワーク、経済などを適切なアセスメントの重要性が強調された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケア提供のアウトカムを調査するのは、まず、自治体から協力を得るための了承を得るのに時間がかかる。さらに、複雑な調査であるため、内容を伝えていても確実に伝わっていなかったりして、再度訪問しなければならない。このことを前回の高齢者住宅のアウトカム調査で経験していたため、細心の注意を払って進めた。その効果があったのか、こちらの欲しい情報を開示していただけた。自治体で在宅ケア利用を終結した95名の情報を個々に聞けたのは充実した内容だと評価できる。また、看護師とのインタビューも行えた。しかし、全国調査については、日本からのメール依頼となるため信頼がなく、以前にコンタクトのあった自治体からは返信があったが、他は無応答で4自治体からしか返答が得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、予定どおり日本における調査を進める。海外については、在宅24時間ケアのアウトカム調査は想像以上に困難であることが判明した。平成26年度は海外調査はしない予定であったが、26年度はイギリス調査をプレ調査として行ない、予定年度までの完成を目指したい。予算は、そのために一部来年度に繰り越した。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年度には、国内調査に焦点化する予定であった。しかし、25年度デンマーク調査を通じて在宅24時間ケアのアウトカム調査の困難性を痛感したため、26年度におけるイギリスのプレ調査の必要を痛感した。次年度使用額は、イギリスのプレ調査に使用する予定である。 イギリスのプレ調査を平成26年9月に行い、調査協力先を確定する。了承が得られた自治体・組織があれば実際に調査を進める。
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