研究課題/領域番号 |
25380775
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研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
松岡 洋子 東京家政大学, 人文学部, 准教授 (70573294)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | エイジング・イン・プレイス / 地域居住 / 巡回型24時間ケア / 定期巡回・随時対応型訪問介護看護 / アウトカム / デンマーク / イギリス / オランダ |
研究実績の概要 |
本年度の海外調査予定はなかったが、昨年度のデンマーク調査で在宅ケア利用終了者の調査の困難性を痛感したため、イギリス調査を開始し9月と3月に調査を行なった。イギリスにおけるコミュニティ・ケアの概要をNHSの下に提供されている訪問看護制度も含めて把握することができた。また、日本の定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業者の全数調査も2月配布で実施することができた。 コミュニティ・ケアの終了(地域居住アウトカム)はイギリスでは死を意味し、全国平均では「病院54.5%、自宅20.3%、ホスピス5.2%、ケアホーム17.8%」という内容である。統計をとっている事業所は少ない中で、A市の事業者の1地区では同「57.0%、19.4%、3.8%、18.1%」という結果が得られた。 日本では、平成26年3月までに定期巡回サービスを開始した事業者を対象に403事業所へのアンケートを配布した。204の有効回答(有効回答率50.6%)を得た。詳細な分析は継続中であるが、「死亡看取り13.7%、入院後死亡25.7%、死亡その他3.0%、施設入所22.1%、長期入院11.8%、改善して他サービスへ9.9%、悪化して同2.9%、引越し2.7%、その他5.8%」という結果が得られ、施設入所・長期入院が依然として多いが、看取りも進んでいることが確認できた。地域提供型(56.3%)、集合住宅型(18.2%)、混合型(25.3%)でアウトカムが異なることを予想していたが、地域提供型では改善(12.9%)が高く、集合住宅型では施設入所(19.9%)は少ないが長期入院が非常に多く(21.3%)、改善(5.0%)・悪化(1.7%)ともに低く、看取り(10.4%)がやや低く、入院後死亡(29.4%)が高い傾向を示した。地域提供型は「自立支援型」であり、集合住宅型は施設代替ではあるが「医療依存」が高いことが示唆されたと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
イギリスにおけるコミュニティケアのアウトカム調査は、その困難性を予測して、本来27年度調査であったものを1年早く始めた。事業所が関連統計をとっていないため非常に難航したのは事実であり、内容も十分ではないが、先取りで進めているといえる。また、イギリスの地域における医療・保健・介護の実態を把握できたのは大きな収穫であった。2015年度はオランダ調査を開始して、最終年度に向けての完成をめざしたい。また、日本の定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所を対象とした悉皆調査については、回収率アップのために電話による回答促進などを図った。50%を超える回答率を得られたのは、大きな成果であった。分析は来年度の業務となるが、回収まで完遂したことは評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、海外についてはオランダ調査を開始して、できればイギリスの補足調査も行う予定である。海外の地域居住アウトカム調査は、想像以上に困難なので、慎重に進めたいと思っている。平成26年7月のENHR(European Network for Housing Reserach)2014にて、アウトカムは集合的数値で十分である、海外で共同研究者を持つとよいことを提案された。巡回型24時間ケアの終了理由については集合的数値を押えて、それに付加する形で個々の代表的な事例についてインタビューするという手法をとりたい。また、イギリスにおける地域居住を支える制度を理解することも重要なので、複数回訪れて知見を蓄積していきたい。 日本の定期巡回・随時対応型訪問介護看護の調査は回収まで行ったので、平成27年度に詳細な分析を行い、情報発信して制度の普及と発展に寄与していきたいと考えている。また、データベースが整ったので、今後に向けてメンテナンスしていきたいと考えている。回収率をアップするためには、督促が重要であり、そのための時間確保、人員確保が必要である。また、計画には入っていないが、できれば、通常の指定訪問介護利用者の利用アウトカムとの比較をすると定期巡回・随時対応型訪問介護看護の有効性を実証できるかもしれないので、その可能性を探りたい。
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