研究課題/領域番号 |
25380775
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研究機関 | 東京家政大学 |
研究代表者 |
松岡 洋子 東京家政大学, 人文学部, 准教授 (70573294)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | エイジング・イン・プレイス / 巡回型24時間ケア / インフォーマルケア / 専門職連携 |
研究実績の概要 |
本年度の海外調査は、イギリス調査を予定していた。しかし、初年度(平成25年度)のデンマーク調査で在宅24時間ケア終了者実態を把握することの困難性を痛感したため、平成26年度は海外調査の計画がなかったが、イギリス調査を前倒しで行った。オランダ調査は平成27年度に終了したが十分ではなかったため、平成28年度をオランダの補足調査にあてた。 アムステルダム市の二つの事業所を訪問した(2016年9月)。A事業所では通常50人前後の利用者があり、レベルの高い看護師(レベル5)の事業所である。毎年40人の利用者の出入りがある。2010年からの集計として「改善(263人)81.3%、死亡(56人)18.7%、施設入所0%(6年間)」であった。利用者が常時100人の他の事業所では、「死亡(18人)78.3%、施設入所(5人)21.7%(1年間)」であった。事業所によって異なるが、平成27年度調査結果と調整すると「死亡78-85%、施設入所0-21%」という結果にまとめることができる。巡回型24時間ケアがよく整っているデンマークでは「死亡40%」というのが平均値であることと比べると非常に高い数値である。 エイジング・イン・プレイスを促進する要因としては、「インフォーマルケア(家族、隣人の支援)」「よい在宅ケアと専門職連携」「薬の上手な活用」「本人の強い意志」「専門職の情熱」「暮らしの中での小さな喜び」「人とのコミュニケーション」などが挙げられた。デンマークと比較すると、「家族を中心とするインフォーマルケア」「よい在宅ケアと専門職連携」が共通要素として浮上する。 在宅ケア終結の内容だけでなく、サービスを提供する事業所や、サービスに付随する生活支援、サービスを受ける場である高齢者住宅についても広く調査することができ、オランダのヘルスケア政策の理解に役立った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、日本、デンマーク、イギリス、オランダの巡回型24時間ケア利用者の終結について数量的に計測し、これをもってエイジング・イン・プレイスのアウトカムとして評価することを目指した。さらに、「真のエイジング・イン・プレイス=地域での看取り」の促進要因・阻害要因を明らかにすることを目的とした。本年度はオランダの補足調査を行なうこととした。当初予定した日本の定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所の悉皆調査、ならびに海外3国については調査を終了している。 最終年度である本年度は全体の総括を行なう予定であったが、これについては論文執筆も含めてやや不十分であると考えている。海外渡航については、他の研究調査でオランダに行くことがあったので、夏休みを利用しての渡航であるため継続滞在して調査を行なった。そのため旅費にゆとりができた。その分を来年度に回して、より良い最終のまとめ(論文投稿やオランダへの再調査など)ができるようにした。
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今後の研究の推進方策 |
一年の延長を申請したので、平成29年に本研究のまとめを行なう予定である。 まず、日本における定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所調査の分析を深め、補足のための訪問を行なう。さらに、利用者の終結についても詳細な情報を得ているので、海外との比較を含めて行なう。 海外調査については、できるだけオランダの追加調査を実施して、3国間の比較を行なう。問題は、デンマークでは自治体が統括しているため市内情報を一元的に把握できるが、ケア・プロバイダーが複数存在する国では一元的な把握が困難であることである。複数のプロバイダーの結果を集計して平均値を求めなどして比較を行なう。促進要因・阻害要因については、記述的比較を中心に似通っている点、異なる点などを抽出する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費が多額になっているが、これは平成27年度の海外渡航費が繰り越されたためである。平成28年度の海外渡航費は次の理由で少額となっている。別件調査でヨーロッパに渡航する機会があり、海外における長期調査は夏休みがメインとなるため、別件調査と旅費を折半して継続滞在することで当該調査を行なった。また、平成29年3月に渡航することも可能性としてはあったが、入試業務などのために渡航することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度には、オランダの補足調査を予定している。すでに記述したが、調査対象であるケア・プロバイダーが複数に渡っている上に情報の開示を拒むケースもあり、困難が予想される。すでに訪問したことがあるプロバイダーに事前連絡をとって、協力を依頼する予定である。 日本においては、定期巡回・随時対応型訪問介護看護事業所を訪問して、悉皆調査の補足を行なう。 また、調査結果を統合的に分析して論文発表や論文執筆(日本、海外)に力を入れるつもりである。
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