本研究では、全体としてつぎのような成果があった。 第1に、見守りに関する概念の構成を明らかにすることができた。すなわち、見守りの目的とプロセス、活動の種類とネットワークのタイプを踏まえ、見守りの担い手(家族、近隣住民などのインフォーマル関係者、地域の福祉サービスを含む民間事業者、公的機関・専門機関など)がどのようにネットワーク化される必要があるかについて明らかにした。特に、東京都福祉保健局が提示した「緩やかな見守り」、「特定の見守り」、「専門的な見守り」を援用し、現場のデータを用いてどのようなネットワークが形成されるかについて、実証的な検証を行った。また、見守りに特化した公的機関である東京都の見守り相談室(シルバー交番)についての研究を行い、その仕組みと機能を明らかにした。 第2に、見守り活動とネットワーク形成に関する分析枠組みを明らかにした。具体的には、墨田区の高齢者見守り相談室の事例検討会に参加し、見守り資源とネットワークの段階を踏まえた類型を提案した相談員の事例分析に役立てるとともに、得られたデータを介入の経過分析や統計資料として活用し、活動の見える化の方法を提示した。 第3に、文京区社会福祉協議会の地域福祉コーディネーターと協力して、コーディネーターの相談記録様式を考案し、これを用いて活動プロセスの見える化を行った。また、幾つかの社会福祉協議会を訪問して記録様式とそのデータの活用方法についての研究を行い、見える化の方法論を明らかにした。この成果の一部は日本地域福祉学会で報告している。 第4に、韓国政府が実施しているドルボミ(見守り)制度の検討を行うために、韓国大邱直轄市達西区、同東区を訪問して訪問担当者へのヒアリングを行い、日本の見守り事業との差異を検討して、その一部を論文として発表した。
|