研究課題/領域番号 |
25380777
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
山田 祐子 日本大学, 文理学部, 教授 (90248807)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 高齢者虐待 / 虐待 / 高齢者 / 死亡 / 検証 / ソーシャルワーク / 地域包括支援センター / 社会福祉 |
研究概要 |
「高齢者虐待防止法」が2006年4月より、実施となり、国による大規模調査や自治体を経由した実態把握も厚生労働省によって毎年行われ、虐待の概要はある程度明らかにされた。一方、実践現場での支えとなる方法論も筆者もかかわった日本社会福祉士会による「高齢者虐待対応ソーシャルワークモデル」が構築され、一定の成果をあげた。そのような中、研究代表者山田祐子は、科学研究費補助金で2011年に全国市町村および地域包括支援センターへの質問紙調査を実施し、高齢者虐待の死亡事例の把握を行い発表した。その結果、死亡事例のみならず、死亡には至らないが重篤な事例および被虐待者の自殺や死亡による終結事例等、より緊急性、優先性が高い事例が全国に存在することが示唆されたので、2012年、再び、市町村および地域包括支援センターに全国調査を実施し、死亡事例としてすら把握されていない非常に痛ましい事例が存在することを明らかにした(平成22~25年度「格差社会における高齢者虐待ソーシャルワークの理論と実践の体系化に関する調査研究」、基盤研究(C)課題22530625)。 そこで、次にくる課題として学術的貢献が求められている課題の一つは、「検証」であり、その理論と方法の開発が急務であるとし、「高齢者虐待の死亡事例等」の検証に焦点」を当て、その理論と方法の研究開発をテーマとした。 今年度は、文献調査と資料収集を行い、①本テーマに関する内外の資料を国内において収集、②各地方自治体が作成したマニュアルや行政資料等に関する資料収集、をした。 その結果の一部と高齢者の権利擁護をめぐる状況についてまとめ、発表した。 また、2012年に行った全国調査における、市町村や地域包括支援センターにおける検証の実態に関する質問項目について、分析を行い、発表した。 予備調査については、先駆的な都道府県の最新の情報を収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前回の科学研究費補助金による調査「格差社会における高齢者虐待ソーシャルワークの理論と実践の体系化に関する調査研究」(基盤研究(C)課題番号22530625)において、研究計画を一部変更し、予算およびタイムスケジュールがかなり厳しくはなったが、高齢者の虐待による死亡事例等については、全国調査を既に敢行しているため、本研究テーマに関する準備状況が非常に良かったことがあげられる。今年度は、そこで得られたデータを再度分析することにより、貴重な知見が得られたばかりでなく、次にくる全国調査の効果的な実施を検討することができた。 予備調査等については、「検証」に関する自治体の動向についての情報収集を行った。研究代表者は、死亡事例の検証の意義について、全国調査の結果を発表することをとおして情報提供を行い、検証を推進するよう働きかけているが、研究代表者が関わる自治体の中で、先駆的な施策を実施する地域は、研究代表者もかかわっていく中で、検証実施に向けた動きを見せ始めている。 文献調査と資料収集については、本研究は、研究代表者が過去において科学研究費補助金を受けたそれぞれの研究を発展させたものであるので、すでに文献調査と資料収集は行っており、さらに継続して、最新の情報を収集していく。今回は、特に海外の研究状況について詳しく調査を行い、分析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に行った、自治体における情報収集から、検証の動きが都道府県、市町村においては積極的な動きがあまり見えないことから、2012年実施の全国調査からの知見と大きな違いはみられないかもしれないので、本研究における全国調査(郵送による質問紙調査)の実施は、計画を変更し、2015年度に実施することも検討していく。そのため、2014年度は、質問紙調査の準備としての予備調査とともに、先駆的な自治体の情報収集を行う予定である。 先駆的な自治体の動きをみつつ、海外研究についても更に文献調査および情報収集、資料収集を行い、高齢者虐待ソーシャルワークおよび虐待対応ソーシャルワークの方法論についても検討、分析を行い、日本における方法論の研究開発および効果的施策を検討する作業を継続する。
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次年度の研究費の使用計画 |
多様な分析を行うため、当初の予定よりも、PC統計処理ソフトを、多くの種類のものを購入し、その一部が高額であったたため、研究費の使用計画を変更し、「人件費・謝金」を節約することとなった。折しも、予備調査の内容について、この研究分野の先駆的な実践を行う自治体がきわめて少なく、近距離の自治体となったため、殆ど出費がなかった。 本年度の研究の成果をとおして、大規模な全国調査である、郵送による質問紙調査は、2015年度の実施の可能性について検討することとし、2014年度の支出は、当初計画より、かなり減少し、2015年度にその残額を使用する予定である。 補助金申請の算定金額から約3割、研究費がカットされたが、計画した全国調査の規模は、研究の趣旨から、縮小が不可能なことから、計画を一部変更することとする。また、データ入力の人件費を見積もったところ、業者に依頼すると、人件費が1日7,600円では難しく、管理費もかかることが判明したので、データ入力にかかる人件費を委託するか否かを検討して、最終的な支出を調整する計画である。また、研究成果の広報について報告書の印刷と発送を計画したが、費用を節約するため、希望者にEメールで電子ファイルという形で送付することも検討している。
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