研究課題/領域番号 |
25380784
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
原田 晃樹 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (20340416)
|
研究分担者 |
藤井 敦史 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (60292190)
松井 真理子 四日市大学, 総合政策学部, 教授 (30340409)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | サード・セクター / パートナーシップ / NPO / 自治 / 社会的価値 / コミュニティ / 評価 |
研究実績の概要 |
平成27年度においては、概ね以下のような調査研究を行った。 第一に、ローカル・ガバナンスをコミュニティ形成の視点から捉えるために、1980年代のスコットランドにおけるコミュニティ・ビジネス(CB)に関する文献をレビューした。CBは多義的な概念であるが、元々は荒廃地域において一般労働市場から排除されてきた人達自身が、自治的に地域課題を解決していこうとするものであった。そして、地域の多様なステークホルダーに対する応答性を確保するために、当事者自身による運営参加や地域に開かれたガバナンス構造を志向していた。それが、政府の地域再生スキームの導入や公共サービスの外部化の進展により、次第に事業の経済的側面(雇用実績や収支)が重視されるようになっていった。こうしたCBの展開過程のレビューを通じて、ローカル・ガバナンスのありようが政府政策に一定程度依存することが確認できた。 第二に、サード・セクター組織が自治体とどのようなチャンネルを通じて交渉等を行っているかについて、バーミンガム、グロスターシャー、ロンドン・タワーハムレッツ等の状況を把握し、次のような傾向を確認できた。 一つは、全国規模の福祉サービス系組織によるフランチャイズ化の動きである。こうした動きは、地方の福祉チャリティが安定した福祉サービスを提供するノウハウを備え、信用力を高める効果があるだけでなく、県や国レベルにおける政治的な影響力の強化にもつながっている。 もう一つは、地域の中間支援組織(CVS)による自治体の受注機会獲得支援やコミュニティによるパブやコミュニティ・ショップの運営支援の動きである。 こうした新しいパートナーシップの動きは、サード・セクターに公的資金が提供されることに対する正当性の論拠をどこに求めるかという問題を招来する。そこで、次年度においては、サード・セクターのいわゆる社会的価値をめぐる評価の状況について検証していきたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
インタビュー調査先や調査事項については多少の変更はあったが、平成28年度は都合2回渡英することができ、当初の計画に対する情報については概ね把握することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度度は、本研究の最終年次であるため、これまでの取組をまとめ、不足する事項について再調査すると共に、サード・セクターの社会的価値をめぐる評価の状況とその問題点などについて考察する。 また、その結果を書籍や論文等にまとめ、積極的に情報発信していきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本務校の業務を優先したため、イギリス調査が3月中旬になってしまった。事前に経費の支出見込を立て、適正な執行を心がけたが、結果として次年度への繰り越しが生じてしまった。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は本研究の最終年次であるため、調査旅行については原則として年内に済ませることとする。海外の調査旅行については、節減に努めることは当然であるが、どうしても複数の地域にまたがると経費がかさんでしまうため、前年度未使用額分については、主として海外調査旅行関連の支出に充当していきたい。また、本務校の担当部局との連絡調整を緊密に行うことで、進行管理を適切に行いようにしたい。
|