研究実績の概要 |
少子化対策として、子どもの預け先の確保は最重要課題である。現在、子ども・子育て支援新制度が施行され、地域型保育として家庭的保育の拡充を図っている。しかし制度の拡充を図っても、働いている家庭的保育者が安心して働ける環境でなければ良質なサービスは提供できず、子どもへの質の高い保育を保障することができない。そこで本研究では、新制度移行前と後における家庭的保育者の労働環境の実態把握と、家庭的保育者の精神的・身体的負担感に関する調査を実施し得られた結果から、家庭的保育者が働きやすい環境づくりを検討した。 新制度以前の家庭的保育事業では、実施主体が市区町村であるため、実施基準や支援体制にばらつきがあり、不平等さに対する不満があった。初年度は、東京都23区において家庭的保育事業の格差の実態を調査。その結果、受託率,家庭的保育事業費,保育料,補助金額等に格差が生じていることが明らかとなった。次に、新制度移行前後での家庭的保育者への労働環境調査を実施し、実態を把握することとした。新制度移行前の調査結果では、①過重な労働時間,②休暇保障,③欠員対策,④緊急一時預かり体制の4つの問題点が明らかとなった。 最終年度は、これらを受け、新制度移行後の労働環境の実態と移行に対する意識ならびに精神的・身体的負担感について調査した。その結果、家庭的保育者は、職務満足度は高いものの、生活習慣の乱れや身体的・精神的負担感が高い傾向にあった。補助金額は約9割が増額されていたが、新制度移行に対して賛成している者は3割に満たなかった。 本研究により、新制度移行前後における家庭的保育者の労働環境の実態が明らかとなった。新制度は、補助金額の増額,連携施設,調理員の確保等、保育の質の向上に寄与するものだが、家庭的保育者の労働環境の改善には、事業の透明性と市区町村の格差是正、個々の希望にそった受託条件の検討が必要である。
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