研究課題/領域番号 |
25380791
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 金城学院大学 |
研究代表者 |
上村 千尋 金城学院大学, 人間科学部, 教授 (10369788)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 児童自立支援施設 / 子どもの権利 / 意見表明権 / 参加の権利 / 適正手続き |
研究概要 |
次年度の質問紙調査の準備として、検証の基礎資料と自立支援の担い手である施設職員からの情報提供を得るため、幾つかの児童自立支援施設を訪問し、入所手続きや処遇場面における子どもの意向聴取(意見表明権)や情報提供などの現状について話を伺った。また、少年司法の観点からも子どもの権利擁護や自立支援のあり方の理解を深めるため、少年院や少年鑑別所を訪問した。さらに、子どもの権利に関する研究会等に継続的に参加するなかで、児童自立支援施設の運営指針や処遇について、「子どもの権利条約」および子どもの権利擁護の視点から整理する作業を行った。 これらの研究活動の結果、児童自立支援施設の処遇の特性と併せて、子どもの権利についての特殊性を配慮しつつ、権利擁護や自立支援を行う「権利基盤型アプローチ」の構築に向けて、実践課題の更なる整理と検証が必要であるとの見解に至った。また、施設により処遇や運営の在り方が異なるため、本施設の歴史的変遷も踏まえて、現場で用いられる用語や処遇論を整理していく作業も必要であることが伺えた。 また、施設運営や処遇の評価・検証における子どもの意見表明・参加の実態を検証するため、「社会的養護関係施設の第三者評価」のなかの「児童自立支援施設・情緒障害児短期治療施設版の利用者評価」の質問紙調査を5つの施設に試験的に実施させて頂き、分析結果を対象施設に報告した。またその内容については、施設協議会発行の年会誌に論文としてまとめた。質問項目のなかでも、とりわけ当事者評価が低かったのは、施設生活や処遇における不服・不満の申し立て(相談)に関する子どもの認識度であった。このことから、権利擁護の一環として子どもの意見表明を保障する取り組みは体制的に整いつつあるが、その体制やシステムの活用の有効性等については、支援の受け手である児童からの評価と併せて更なる検証が必要であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
諸事情により、当初予定していた施設数より訪問施設が下回ったことから、限られた施設と職員から得た情報の収集および分析となったが、近年の入所児童の特性、権利擁護を主体とした施設運営および処遇を重視した取り組みの現状、そのなかで職員が抱える課題などについて、幾つかの事例も踏まえて把握することができた。 また、5つの施設を対象に「社会的養護関係施設の第三者評価」のなかの「利用者評価(子どもの側からの評価)」の試験的実施とその分析を行い、その結果を施設側にフィードバックする機会を得た。「利用者評価」の質問事項や回答形式のあり方、実施の際の施設側の配慮や子どもの意見を聞き取る際の留意事項など、支援の担い手である職員と共同して検証できたことは、今後の調査および研究を進めていくにあたり、非常に有益なものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き施設を訪問し、生活指導や学科指導などの様子の見学、職員からの聞き取りを通して、現場の理解を深めるとともに、他都道府県の児童自立支援施設を対象に郵送による質問紙調査と施設運営に関する資料収集を実施する。質問項目のベースとなるのは、①児童の自立支援のプロセスへの参加手続きについて、②児童の自己決定や参加、主体性を尊重した生活指導、学科指導、就業指導など、③意見表明・参加しにくい児童への支援、④児童の意見表明・参加を促進するための研修や取組の現状等である。 また、承諾を得た施設の入所児童への調査については、来年度の実施を目標に、施設職員や子どもの権利擁護に携わる実務家等の助言を得ながら、質問項目や実施のあり方について検討を重ねていく。
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