研究課題/領域番号 |
25380793
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
柏倉 秀克 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (40449492)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ソーシャル・サポート / 視覚障害者 / ピア・サポート |
研究実績の概要 |
名古屋市内の障害者相談支援センターの協力を得て、中途視覚障害者に対するピア・サポート活動の効果に関する調査を実施した。調査の目的は、①支援センターにおけるピア・サポート活動に参加する在宅の視覚障害者の実態を把握するとともに、②参加者へのグループインタビューを通してピア・サポート活動の効果について考察することとした。調査の対象は、本研究の趣旨に賛同した10人(男性2名、女性8名)である。障害のレベルは身体障害者手帳1級が5人、同2級が5人である。インタビューでの質問項目は、①ピア・サポート活動に参加した契機、②活動に参加することによって得られたこと、③活動に参加することによる精神面の変化とした。調査は1回60分程度とし、3回に分けて実施した。得られたデータはコードとして取り出し、類似したコードをカテゴリーにまとめた。 抽出されたカテゴリーは、①生きづらさを補うための活動への参加、②障害を抱えて生きることの苦しみ、③活動の目的は点字の習得から仲間との交流へ、④活動による心理面の回復である。リハビリテーションの臨床現場において「元気」と「自信」は、受障者の心理的回復の目安として着目する専門職は多い。ピア・サポートを受けた参加者の多くは元気と自信を取り戻すことによって、社会参加に向けた取り組みが増えている。例えば外出の機会が増える、あきらめていた趣味に再び取り組む姿などである。 本調査の結果、支援センターの活動は閉じこもりがちな視覚障害者の社会参加と心理面の回復を促進する効果を持つことが明らかとなった。各種の活動を主催する支援センターは参加者にとって安心できる居場所となっているが、全国的にその存在に偏りがある。活動場所を広げていくためには公的な支援が求められる。さらに相談員の絶対数や待遇は満足できる水準にほど遠いのが現状であり、その改善が求められることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間中の達成目標の①中途視覚障害者のメンタルヘルスと関連要員の検討、同じく達成目標の②孤立しがちな中途視覚障害者に対する支援システムの検討は、名古屋市内の障害者相談支援センターの協力を得て調査を実施した。なおその成果は査読論文として研究誌に掲載されている。達成目標の③欧州における研究上の情報収集については、訪問先の事情によって平成26年度中の実施は困難であった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度中に本研究領域において先進的な取り組みが見られるドイツとイギリスを訪問し、研究上の情報収集を進める。 さらに平成26年度までの研究結果をふまえて、中途視覚障害者に対する援助方法を実証的に検討する。援助実践の試行は名古屋市内の障害者地域生活支援センター、リハビリテーションセンター、全国の視覚特別支援学校を予定している。 平成27年度は研究の最終年度に当たる。社会福祉方法論における本研究の位置づけを明確化するため、関連学会においてシンポジウムを企画し、そこでの議論を整理するとともに実践上の諸課題を明確化する。また研究成果をまとめた報告書を作成し、研究協力者や関連研究機関等に配布する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マインツ(ドイツ)で予定していた視覚障害者支援施設への調査が訪問先の都合で取りやめとなった。このため旅費が予算額を下回ったことによるもの。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は平成26年度に予定していたマインツ(ドイツ)の視覚障害者支援施設への調査に充てる。なお研究協力者として専門家の同行を予定している。
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