研究課題/領域番号 |
25380796
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
篠田 道子 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (00319302)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多職種連携 / 終末期ケア / 日仏比較 / 在宅入院制度 |
研究実績の概要 |
平成26年は3つの課題に取り組んだ。課題1は、フランスにおける多職種連携とネットワーク形成の現状についてヒアリング調査を行った。対象は、CLIC(地域密着型インフォメーションセンター)と、MAIA(サービスの統合センター)である。両者ともに、わが国の地域包括支援センターの機能に近く、ケアマネジメントが主な業務であった。運営基準やサービスの実績など資料に基づいてヒアリングを行った。その結果、両者ともに法的根拠があり、事業所数も増加し、コーディネート医師と看護師が主にケアマネジメントを実践していた。MAIAの方が、トレーニングを受けたケースマネジャーを配置して濃厚なケアマネジメントを提供していた。また、フランスはケアマネジメントを担う機関が複数存在しているため、どこがイニシアティブをとるのか分かりにくいという課題もあった。 課題2は、わが国の終末期ケアにおける多職種連携教育・研修の現状と課題について、文献調査を行った。その結果、多職種連携の実践事例は数多く報告されていたが、体系的な教育・研修については十分とは言えず、さらに充実させていく必要性が示唆された。今後の課題は、①多職種で学ぶ機会を増やす、②教育内容・方法の検討と教育効果の評価をすすめる、③福祉系職種の研究を充実させる、の3点があると考えられた。 課題3は、フランス医療付き老人ホームにおける認知症高齢者の終末期ケアと多職種連携についてヒアリング調査を行った。その結果、3つの知見が明らかになった。①レオネッティ法が施行されてからは、多職種チームによるカンファレンスが定着している、②信頼できる代理人を指名している人は少なく、認知症高齢者については、家族を交えた面接を数回実施しているが、結果として、家族の意向を尊重している、③医療職の配置が手薄いので、かかりつけ医や緩和ケアモバイルチームとの連携を重視していることである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調査1は、フランスの地域包括ケアの中核的な存在であるCLILとMAIAの個別ヒアリングは終了した。ただし、多職種連携やネットワーク形成に関する全国調査が入手できていないため、引き続き関係機関に働きかけて調査結果を入手したい。 調査2は、医療・福祉分野における多職種連携教育について、文献調査は終了した。平成27年度は、医療・福祉施設を対象に、終末期ケアにおける多職種連携教育のプログラムを作成し、実施し、評価する予定である。 調査3は、フランス医療付き老人ホームにおける終末期ケアの多職種連携については、実態調査、ヒアリング調査ともに終了している。平成27年は、フランスの調査をベースに日本での調査を実施したい。
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今後の研究の推進方策 |
調査1は、フランスの地域包括ケアシステムについて、全国レベルの実態調査を入手し、翻訳を進める。さらに、ヒアリング調査を継続して、多職種連携とネットワーク形成について日仏比較を考察する。 調査2は、日仏における終末期ケアの多職種連携と評価について、調査を進める。特に評価についての研究が弱いので、自己評価と第三者評価を含めて検討していく。 調査3は、医療付き老人ホームにおける終末期ケアのフランスの調査は終了しているが、日本の調査が未実施である。平成27年度中に特別養護老人ホームまたは医療療養病床で実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年3月18日から3月25日まで、フランス・パリにて多職種連携と終末期ケアに関する調査を実施した。調査に同行した通訳に支払う謝金と研究代表者の旅費が、2015年4月以降に発生することから、次年度使用とした。
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次年度使用額の使用計画 |
2015年3月18日から3月25日まで、フランス・パリにて多職種連携と終末期ケアに関する調査を実施した。調査に同行した通訳に支払う謝金の請求については、2015年4月上旬に受け取り、すでに謝金を支払っている。 2016年度は、日本における多職種連携教育の現状と課題を把握するために、医療機関または介護保健施設にて調査を行う。調査に必要な交通費、謝金、データ分析(委託費)などの支払いを予定している。さらに、フランスでの多職種連携について、行政、NPO、医療機関、在宅入院機関等でのヒアリング調査を予定している。そのための旅費、通訳費、資料翻訳費などの支払いが見込まれる。
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