研究課題/領域番号 |
25380804
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
櫻谷 眞理子 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (50288619)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 児童養護施設 / アフタ-ケア / 施設職員 / 退所者のニーズ / 自立生活 / 施設間格差 / 施設整備 |
研究実績の概要 |
児童養護施設におけるアフターケアの現状と課題を把握するために、全国の児童養護施設601箇所に調査用紙を送付したところ、257箇所から回答(43%の回収率)があった。集計結果や自由記述の分析を行っているところだが、施設職員の抱える悩みや葛藤、実践上の課題が浮き彫りになった。例えば、施設職員の多くが退所者への支援の必要性について認識しているにもかかわらず、そのための方法や制度が未整備なため、彼らのニーズに十分に応えられない状況がみられた。一方、施設には限界があるので、他の相談機関の拡充を図るべきだという意見もあった。施設現場の厳しい実態の反映だと思われるが、アフターケアに消極的にならざるを得ない状況を放置することは、施設間格差の拡大につながる恐れがあると思われる。 退所後に孤独感が募ったり、対人関係や仕事上の悩みが生じた時に、自分が育った施設の職員に救いを求めることができる体制が整うことは、退所者にとっても大きな安心につながる。自分のことをわかってくれる職員に電話をかけるだけで、気持ちが落ち着いたという退所者の言葉からもそのことがうかがえる。さらに、「退所者へのアフターケアを行うことが、入所中の子どもたちにとっても将来への安心につながる」といった意見にみられるように、自立生活に大きな不安を抱いている在園児にとっても安心材料になる。 このことからも、施設を退所した人たちが困った時にはいつでも出身施設の職員に相談に行くことができるように、すべての施設においてアフターケアが行えるように制度を整えていくことは重要な課題だと思われる。その際、入所児童のための施策や実践の改革と連動しながらアフターケアのための制度作りや施設整備がなされることが望まれる。今後は、さらに聞き取り調査を継続して、アフターケアの実践方法についても検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績で述べたように、児童養護施設におけるアフターケアの現状と課題を把握するために、質問紙を作成し、全国の児童養護施設601箇所に調査用紙を送付した。その結果、257箇所から回答があり、43%の回収率であった。今後の方向性を考えるうえで、貴重な意見やデータを得ることができた。 また、相談機関等による施設退所者への支援活動の実態と課題を把握するために、日向ぼっこの職員へのインタビューを行った。さらに、当事者による活動について把握するために、当事者団体の活動に参加し、観察を行った。 このように、本年度は研究の分析とまとめに必要なデータの収集を行ったので、おおむね順調に研究を進めることができたと考える。
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今後の研究の推進方策 |
質問紙調査に協力してくれた施設の職員を対象にインタビューを行い、さらにアフターケアの内容・方法に関する研究を深めたい。 さらに、地域における相談機関の職員へのインタビューを行い、アフターケアのニーズについて検討を加える。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は全国の児童養護施設を対象にアンケート調査を実施した。その結果の分析を行ったところ、実態をさらに深く堀り下げるためにインタビュー調査を行う必要が生じた。質問紙調査に加えて質的調査を行い、実践分析を行うことが、今後の対策や方向性を示すうえではるかに有効だと思われる。そのため、次年度も研究を継続することになり、使用額の変更が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
施設職員と当事者活動を行っている人たちを対象にインタビュー調査を行う予定であり、そのための経費として使用する予定である。 また、研究報告書を作成し、印刷する予定であり、そのための費用として使用したい。
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