本研究の目的は,生活型社会福祉施設で実施されるケアワーク構造,特にケアワークに付随して実践されるソーシャルワークについて明らかにすることである。最終年度は,前年度までに実施した生活型施設に勤務するワーカーへのインタビューの分析から抽出したケアの専門性とソーシャルワークの関連についてモデルを構築し,質問紙調査によりその適合性について検討した。 エキスパートへのインタビューで,ケアワークの専門性として抽出されたのは,利用者理解の方法についての知識の増加,経験値によるトラブル対処,回避等の,①専門性の深まりの方向性。利用者との家族,地域住民,関連機関との関係づくりの形成という,②専門性の広がりの方向性。チームワークの重要性への理解,利用者支援の一貫性等,③施設アドミニストレーションへの理解。自分なりの支援理念の形成等の,④理念。以上のことを抽出した。 抽出した専門性が,生活型施設に勤務するワーカーにどの程度実践されているかを確認するため,質問紙調査を実施した。回答は,同施設に勤務する経験年数,保有する資格がそれぞれ異なるワーカー3名(新人,中堅,ベテラン)に依頼し,回答の差を比較することで専門性の深まりについて検証を試みた。「施設実践はソーシャルワークである」という回答に関連が見られたのは,リーダー,主任等の役割の有無であった。これは,経験値の深まりと共に,スーパーバイズの役割を担うことによる,視野の広がりに関連することが想定される。一方,保有資格とソーシャルワークとの関連については確かめられず,施設ワーカーとしての専門性が,OJTにより獲得されていくことが示唆された。
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