本研究は、社会保障政策の最重要課題のひとつである社会的包摂について、アクティベーション型社会的包摂政策としての参加保障型社会保険の設計を提示することである。具体的には、従来、明確に明らかにされてこなかった年金・医療・介護・雇用の4つの社会保険の社会的排除のメカニズム(仕組み)を詳細に解明し、排除をなくし雇用と社会保障を連携させる社会保険の再設計案を提示することである。 平成26年度は、介護、雇用の社会保険において、排除のメカニズム・空洞化の現状を明らかにすることであった。まず、介護においては、介護保険制度の認定申請に2つの課題を発見した。①そもそも、認定の申請をしない人がいる。理由として推測されるのは、認定申請をしなくても家族・親族で介護できたり、外部サービスを全額自費で購入し、介護を受けられるからである。②認定申請して認定されたとしても、サービスの1割負担ができないため、サービスを受けられない人が、一定数存在する(介護保険事業状況報告における、(認定者数-サービス受給者数)の差)。②のケースにおいて、介護保険制度における社会的排除が発生していると考えられる。 雇用においては、従来の雇用保険制度が抱えていた社会的排除、つまり、「就労か生活保護受給か」という二者択一的な選択に陥りがちな制度上の問題点を明らかにした。そこで、2015年4月から施行される生活困窮者自立支援制度が、生活上の悩みを重層的に抱える人をどのように支援できるのか。また、この制度が「就労か生活保護受給か」という二者択一的な選択を促すのではなく、就労支援をはじめとし、衣食住の緊急支援、居住確保支援、家計再建支援、子ども・若者の学習支援から成り、新しい社会的包摂のしくみとして機能することを明らかにした。
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