研究課題/領域番号 |
25380817
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研究機関 | 流通科学大学 |
研究代表者 |
加藤 曜子 流通科学大学, サービス産業学部, 教授 (90300269)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 10代 / 虐待予防ネットワーク / ネグレクト / 要保護児童対策地域協議会 / 特定妊婦 / 青少年 |
研究実績の概要 |
本研究は、ネグレクトの環境下に育った10代の子どもに焦点をあて、虐待防止のネットワークで支えられていくには、どのような機関間の連携や共有が進められているのかを明らかにする。その上で、10代の子どもが生きやすくするための支援の在り方や必要なサービス、課題を提出するものである。1年目は、先進地域を尋ね学ぶことができた。 【2年目の目的】は、国内4カ所の地域の実務者会議の構成員からグループインタビューを通して、10代のネグレクトケースの支援状況を聞き、その後の全国調査に役立つ項目を検討する。 【2年目の調査方法】要保護児童対策地域協議会の4か所の調整機関に依頼をした。あらかじめ基本データをいただいたうえで、当日は実務者会議の構成機関の参加者に参加を願いグループインタビューを実施した。 【結果】調査地は、近畿2か所、東海1カ所、関東1か所である。参加者37名でそれぞれの所属機関は保健、保育、障害者福祉、生活保護、児童相談担当(調整機関)、青少年補導センター、児童相談所、養育支援訪問員21機関であった。10代のネグレクト環境下におかれる要保護児童の多くが「生命の危険がない」とみなされるため、また所属がなくなるため情報が入りにくく、支援ネットが成り立ちにくいこともわかった。10代の特定妊婦の割合は、10代のネグレクト事例のうち、2割弱を占めた。10代の特定妊婦の場合には、子どもを産み育てる親の役割を果たすと同時に、みずからも社会的自立へ向かう子どもであるという2つの課題を持っている。そのためにはどのような支援や工夫が必要となるのか、虐待連鎖を止めるための支援ネットワークはどのように役立てられるのか、どのように関係機関が認知をしているのか、発展させるためには何が必要なのかに課題があがった。よって、最終年においては全国調査を試み、そこから得られた知見から支援提案をする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究2年目は、最終年の3年目に全国調査を予定しているため、それに向けて、要保護児童対策地域協議会・実務者会議参加の関係機関がネグレクト・要保護の環境下で育った10代の子どもへの特徴や支援をどの程度認識しているのかについて聞き取り調査をすることにした。要保護児童対策地域協議会活動が比較的活発であり、実務者会議が月一回は開催されている自治体を選択し、グループによるヒヤリング調査協力を依頼した。 結果は、近畿2市、東海1市、関東1市から協力をいただいた。参加機関21で参加者は37名であった。1都市おおむね7名であった。ヒヤリング時間は約2時間とした。基礎データをあらかじめ質問しておき、ヒヤリング当日は、ネグレクトの特徴を互いに話あうこと10代のネグレクト事例について支援を語り、何が良かったのかを共有し合うことを主眼にした。相談員の中には、10年以上の勤務歴があった。 ネグレクトの特徴は保健師や日頃家庭訪問を実施する相談員などの職種から多くの知見があがった。しかしながら義務教育を終えた子どもについては要保護事例として進行管理台帳にあがっても、急な事態以外は実態や情報が十分に把握されず、手つかずの場合の多いことがいずれの地域の参加機関からも意見として提出された。また義務教育終了後の青少年への状況把握のしづらさもあがった。要保護児童が特定妊婦になり要支援児童を生み、進行管理台帳に2例が並ぶ。その場合には生まれてきた子どもへのケアが優先され、子どもである10代親の心身の発達面や自立のテーマが語られることは少ないのではないかと思われた。この先、10代の親にとって要保護児童対策地域協議会である地域ネットワークで何を必要とするのか。全国調査を通してその実態を把握する必要性が聞き取り調査から得られた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の3年目の計画では、実務者会議に関係する約8機関を対象に、ネグレクト・要支援の環境下で育った10代の親に対するそれぞれ関わる機関の役割や認知について調査をする予定であった。聞き取りの結果、地域における要保護児童対策地域協議会として扱う10代の子どものフォローや検討は子どもの精神的なケアが必要な場合を除けば、極めて少ないことがわかった。今回、事前のグループヒヤリングで分かった点は、要保護児童対策地域協議会においては、10代の子どもの管理件数は全体の2割であり、その中に特定妊婦も含まれている点である。10代の母の問題は10代の妊娠から関係している。近年発生している死亡事例の中には10代の妊娠期に連携がとれていなかったという状況もあり、要保護児童対策地域協議会が活かせていないことが課題となっている。よって、特定妊婦と要支援児童を対象とした調査を実施したいと考える。当初は実務者会議300か所のそれぞれの所属する関係機関ごとへの調査を意図したが、対象を村を除く全国調査を実施する。10代の妊娠から出産への支援について、要保護児童対策地域協議会のとらえ方や、10代の親についての自立へむけての支援実態について明らかにしたい。どのような支援がさらに可能なのかについては、生まれてくる子どもあるいは生まれた子どもとは別に、自分自身の自立へ向けた課題をどのように、プログラム化することができるのか、さらに10代の義務教育年齢を超えた子どもへの自立についてもそれぞれの発達に応じた生活の課題についての視点を入れながら、支援が促進される要因や支援課題を提出したい。 調査結果から得られた内容を分析すること、さらに先進国からの学びなどを整理した形で、報告書作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
576080円については、当初予定していた会議を1回開催しなかったこと(子ども虐待防止国際学会が開催されたため、秋がみなが多忙となった)、さらにヒヤリング調査を1か所減らしたことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度300か所実務者会議各8機関への郵送調査を予定していたが、前年度の資金を利用し、全国市町への調査を計画している。村を除いた約全国市町1500および、区に対しても一定調査協力を得ることを検討している。よって発送費用、郵送料などが当初予算に比べると多くなり、その分に充当させたい。
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