日本における生徒指導は、近年、「いじめ防止対策推進法」に見られるように、アメリカで導入されたゼロトレランス策をモデルとした厳罰化の方向にある 。しかし、こうした厳罰化政策は、いじめ防止に効果がなかっただけでなく、学校の荒廃を招いたことへの反省から、近年、アメリカを初めとした世界各国では、こうした厳罰化に代わる方法として、修復的司法の原理を応用した修復的実践を導入し、健全な学校コミュニティーの形成に取り組んである。本研究は、アメリカでの修復的実践の手法を調査分析するとともに、日本の学校文化に適合した修復的実践のモデルを探ることにある。本年度の研究実績は次のとおりである。 1)ミネソタ州教育局より提供された修復的実践の効果測定資料の分析を行った。2)近年、日本においても、修復的実践が導入されるようになってきた。そこで、NPO法人「修復的対話フォーラム」を基盤として、主に首都圏の小学校・中学校においてRJサークルを展開しているスクールソーシャルワーカー3名を対象に、実施状況について聞き取りを行った。3)RJサークルの他、修復的実践の手法であるカンファレンスやファミリー・グループカンファレンスの実践を始めた東京都内の学校を視察し、導入の経緯や目的、方法、効果についての聞き取りを行った。4)2001年から主に犯罪被害者・加害者の対話を進めてきた「NPO法人 対話の会」主催の修復的対話進行役養成セミナーに参加し、修復的実践を運営するファシリテーターの養成に関する参与観察を行った。5)これらの成果を、『広島国際大学医療福祉学科紀要』第14号において発表した。
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