本年度は3桁の通告ダイヤルの開始および児童福祉法改正に対する審議が行なわれた年度であり、本研究に対して注目が高まった。市町村・児相の役割分担および通告ケースに対する振り分けによる区分対応について、厚生労働省の審議会等、様々な場所で関心がもたれ話題としてあがったことは、これまでの本研究の実績が認知されていると考えられる。最終年度である本年は区分対応システムの実践が長い米国における現地調査(アイダホ州・オハイオ州で実施)と児相・市町村実践者の協力を基に行なわれる全国児童相談所に対する質問紙調査および聞き取り調査、記録に対する内容分析調査を実施し、さらにこれらの結果を基に研究会メンバーにて討議を重ねることにより、最終成果品である「日本における児童虐待ケースに対する区分対応システム」のたたき台案の作成を行った。本たたき台案には大まかには次のような要素が含まれる。 1.通告は189での一本化を図る(ただし、市町村関係機関からのすでに情報および相談履歴のあるケースについての通告は第2次振り分けからの受理とする) 2.振り分けは2段階とする。1階目は情報のみ取得・緊急対応ケースとその他受理ケース、情報のみ取得ケースへの振り分けとし、2段階目は市町村での情報履歴問い合わせを経て、児相と市町村の役割(どちらが主担当となるか)と対応への時間枠の振り分けを決定する。 3.第1次振り分けは児童相談所内でのコールセンター(仮)、第2次振り分けは市町村と児相の混合チームによって行う。 4.今後の課題として、(1)児相と市町村がそれぞれ主担当となった時の役割のプロトタイプ化、(2)市町村のもつ情報履歴のデータベース化、(3)振り分けシステムに対する要対協の役割、(4)振り分け判断の基準の精錬等、(5)虐待対応から家族支援へのシステムのパラダイムシフトの必要性があげられる。今後の課題については継続的研究として取り組んでいきたい。
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