本研究は、地域包括ケアの推進にあたり今後の課題とされている保険者及び地域人材の機能について、いくつかの地域の事例を対象に実態と機能強化プロセスを把握・分析することを通じ、戦略的な機能強化のモデルとモデル成立の要件を提示することを目的とする。
これまでの実施してきた自治体や関係者へのヒアリング調査の結果を整理し、自治体の地域包括ケアシステム構築プロセスの方法論について概念的整理を行った。主要局面は、領域横断的な計画策定、総合相談支援体制の構築、臨床実践における専門的ケアと互助資源との統合、包括ケアの評価、に整理した。このうち、「臨床実践における専門的ケアと互助資源の統合」「包括ケアの評価」の局面については、実現にむけた課題が大きいことが示唆された。それぞれについて、以下のような課題と対応した研究の展開の必要性が示唆された。
「臨床実践における専門的ケアと互助資源との統合」については、地域資源情報・互助資源を把握し個別支援に接合する情報の管理活用のシステム化が課題となっている。このシステム化と実践を結びつける方法論の構築が、今後の社会福祉研究の展開として必要とされている。 「包括ケアの評価」の局面については、社会的ケアを含む包括ケアのアウトカム指標の設定とそれらの地域包括ケアシステムの運営への応用についての方法論が現場には不足しており、今後の研究開発の必要性が示唆された。この点は、統一化された「ケアのアウトカム評価の体系的枠組み」に基づく調査データからの評価分析が行われているイギリスの事例が参考になり、今後、こうした事例分析を含めた研究を展開していく必要がある。
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