研究課題
最終年度の研究では、前年度までに開発した、ソーシャルワーカーを目指す学生を対象とした、自殺の危機にあるクライエントの支援に必要な知識・態度の向上を目指した教育プログラム(以下、教育プログラム)に若干の改訂と使用資材への工夫を加え、その実施可能性と効果および普及に向けた検討をおこなった。教育プログラムの実施可能性と効果検討では、ソーシャルワーカーの養成教育課程を有するA大学で、精神保健福祉士の国家試験受験資格の取得に必要な指定科目において、通常カリキュラムの一環として同プログラムを実施した。その際、教育プログラムの効果検討のために、プログラムを受講した学生で、かつ研究参加に同意が得られた学生を対象に、プログラム直前と直後に質問紙を用いた調査を実施した。効果検証のための指標は、自殺や自殺予防に関する知識、自殺に対する態度、教育プログラムの満足度・理解度・難易度で構成した。また、教育プログラムへのフィードバックも自由記述で求めた。データ分析では、効果検証のための指標とした尺度得点の中央値に、教育プログラム前後で有意な差が認められるかを検討するため、ウィルコクスンの符号付順位検定を実施した。また、教育プログラム受講へのフィードバックも検討した。プログラム受講後は受講前に比べ、受講学生の自殺や自殺予防に関する知識が有意に向上し、自殺に対する態度の一部についても有意な改善が認められた。概ね8割の受講学生が、講義・講義資料およびプログラム全体に満足したと回答、約9割の学生がある一定レベル、内容を理解したと回答した。教育プログラム受講へのフィードバックでは、プログラムは分かりやすく勉強になったとの回答があった一方、提供事例数の充実など、若干の改善を求めるコメントも見受けられた。本研究で開発された教育プログラムには、その実施可能性と予備的効果が十分あることが確認された。
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