本研究は成人の愛着スタイルを測定するための質問紙尺度の妥当性を(1)潜在的指標との関連,(2)愛着スタイル尺度間の比較,(3)アダルト・アタッチメント・インタビュー(DMM-AAI)との関連の3つの方法により検討することを目的とした。 平成25年度には潜在的指標との関連を中心に愛着スタイル尺度の妥当性を検討した。用いた潜在測度は,愛着関連刺激(文字・写真・ビデオ)をプライム刺激とした語彙判断課題,IAT,GNAT,Single Category-IATである。各研究とも概ねアタッチメント理論と整合する成果を得ることができた。今後はサンプル数を増やして再現性を確認するとともに,別の課題においても再現されるかなど結果の頑健性を検証する必要がある。平成26年度は愛着スタイル尺度間の関連を中心に検討し,従来の愛着スタイル尺度の欠点を克服する新しい愛着スタイル尺度(ECR-RS)の開発を行った。ECR-RSは従来用いられてきたECRやIWMSよりも少ない項目数で愛着の2次元を測定でき,かつ母親,父親,恋人,友人といった特定の対象との関係性を測定することができる。平成27年度はコーダーの資格を取得した研究分担者である三上によりDMM-AAIを用いたデータ収集が始まり,ECR-RSとの関連を検討した。分析対象となった全てのサンプルがBタイプであったため,Bタイプの下位分類とECR-RSとの関連を検討したところ,父親と母親へのアタッチメント・スタイルと理論的に整合する結果が得られた。平成28年度はECR-RSの一般他者版であるECR-RS-GOを作成した。これとECR-RSとを併用することで内的作業モデルの階層構造を検討することが可能となった。現在はAAIのサンプル数を増やすべく面接データを分析中である。今後は,Bタイプ以外の不安定型と質問紙および潜在的指標との関連を検討する予定である。
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