研究課題/領域番号 |
25380843
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
長谷川 孝治 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (20341232)
|
研究分担者 |
木村 昌紀 神戸女学院大学, 人間科学部, 講師 (30467500)
相馬 敏彦 広島大学, 社会(科)学研究科, 准教授 (60412467)
清水 健司 信州大学, 学術研究院人文科学系, 准教授 (60508282)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 自尊心 / 安心さがし / 関係性目標 |
研究実績の概要 |
低自尊心者の安心さがし行動は他者からの拒絶を、逆に高自尊心者の安心さがし行動は受容を引き寄せる。本研究の目的は、関係性目標の観点から、両過程の発生メカニズムを解明することである。本年度は、大学生に対する調査を行い、次のような知見を得た。 1)親友から無視された場面の行動に関する自由記述データの分析によって、低自尊心者と高自尊心者の安心さがしの質的な差異を検討した。分析の結果、同性の親友に関して、低自尊心で安心さがしする群は、「怒る」や「無視」という語と近接しており、自己本位的な傾向を示したのに対して、高自尊心で安心さがしする群は、「悲しい」、「落ち込む」という感情語や「謝る」という行動語と近接しており、他者本位の行動をとることが示唆された。 2)親友から無視された場面での反応について、量的尺度を用いて検討した。分析の結果、低自尊心者で安心さがしをする人ほど、これまで通りに関わることをやめる消極的な破壊行動をとることが示された。これに対して、高自尊心者は安心さがしをしてもしなくても、消極的な破壊行動が低かった。 3)友人関係を構築する動機づけに焦点を当て、低自尊心者と高自尊心者の安心さがしの差異について検討した。分析の結果、高自尊心者が安心さがしをするほど、友人関係を良好にしようとする接近的動機づけが高かった。それに対して、低自尊心者では、有意ではないものの、安心さがしをするほど、接近的動機づけが低くなる方向性を示した。また、友人関係を悪くしないようにする回避的動機づけは、自尊心が低いほど、また安心さがしをするほど、高いことが示された。 以上の知見から、低自尊心者と高自尊心者の安心さがしの差異が、親友から拒否されたかもしれない場面での対処行動や、友人関係をどのように構築するかという対人関係動機が関与していることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究計画の前段階として、大学生に対する調査を行った。これらは、関係性目標の効果を検討する研究計画をより精緻に行うために必要であると判断し、行われた。現在、これらの知見を踏まえた、さらなる調査が完了し、予備実験を行っている段階であり、全体としては順調に研究が進展していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題の最終年度である次年度は、本年度の知見を踏まえた上で、当初の研究計画である上方・下方螺旋過程に対する関係性目標の効果について、ダイアド日記調査と実験室実験を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、当初の研究計画の前段階として、大学生に対する調査を行い、ダイアド調査および実験室実験の実施を見送ったため、次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は、ダイアド日記調査と実験室実験を行い、そのための人件費・謝金、データ保存や解析のための物品費、成果発表のための旅費として、平成28年度請求額と合わせて使用する予定である。
|