研究課題/領域番号 |
25380844
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
坂田 桐子 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (00235152)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 社会系心理学 / リーダーシップ / 組織・集団 |
研究実績の概要 |
本年度は,「組織成員の倫理性」尺度の妥当性の検討のための質問紙調査を企業従業員に対して部署単位で実施した。現在,個人レベルの分析を終えたところである。また,それと平行して,メンバーの倫理性を規定するリーダー行動,及びリーダーの倫理性を規定する要因の検討を実験及び調査によって行った。その結果は次の通りである。 (1)「組織成員の倫理性」尺度得点は,上司の倫理性及び回答者自身のモラル・アイデンティティと中程度の正の相関を,他者へのサポート提供と高い正の相関を,部署の違反容認の雰囲気とは中程度の負の相関を示す一方,回答者自身の違反行為頻度とは無相関であった。回答者自身の違反行為頻度は,部署の違反容認の雰囲気と高い正の相関を示しており,上司の倫理性及び回答者自身のモラル・アイデンティティとは中程度の負の相関を示した。このことは,「組織成員の倫理性」尺度得点に一定の妥当性はあるものの,個人の違反行為頻度を予測する尺度として使用されるべきではないことを意味している。個人の違反行為頻度は,むしろ職場の雰囲気によって影響されることが示唆される。 (2)リーダーの倫理性を規定する要因を検討した。(1)と同じ調査において,部下評価による上司の倫理性得点は,部署の職務ストレッサーと中程度の負の相関があった。業務量過多や時間的切迫などのストレス状況は,管理職の倫理性に負の効果をもつことが示された。また,学生を対象とした実験によって,リーダーの自己愛傾向が非倫理性に結びつくことが示唆された。 (3)学生を参加者とした実験によって,リーダーが内集団のメンバー間の公平性だけでなく,他集団との関係においても公平な行動を示すことが,内集団メンバーによるリーダーの倫理性評価を高め,さらにはメンバー自身の倫理的判断をも高めることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度終了時までに,組織成員の倫理性尺度の妥当性の検討を終え,組織成員の倫理性に影響を及ぼすリーダー行動の同定を行う予定であった。組織成員の倫理性に影響を及ぼすリーダー行動の同定についてはすでにある程度の検討を行えたが,組織成員の倫理性尺度が個人の違反傾向を予測しないという予想外の結果が生じたため,部署単位での調査データを増やし,マルチレベルでの検討を精緻に行う必要が生じている。従って,研究目的の達成度としては当初の予定よりやや遅れることになる。
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今後の研究の推進方策 |
交付申請書の段階では,平成27年度は「倫理的リーダーシップ」尺度を作成し,その信頼性・妥当性の検討を行う予定であった。しかし,「組織成員の倫理性」尺度が個人の違反行為を予測しないという結果が得られたため,組織成員の倫理性,個人レベルの違反傾向,及び部署全体で実際に生じた違反・不祥事の関連をより精緻に検討する必要がある。そこで,平成27年度は,組織成員の倫理性と実際の違反・不祥事生起との関連の解明に重点を置き,組織成員の倫理性に影響を及ぼすリーダー側の要因の同定までを目指すこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
企業組織に対する部署単位の調査データが当初の予定に比べて少なかったため,データ入力等に要する人件費や郵送費などが低額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は,当初の予定より多くの調査を行う予定であるため,繰越分を使用する。調査はインターネット調査と組織従業員に対する質問紙調査を予定している。繰越分は,インターネット調査会社への委託費と質問紙調査データの入力のための人件費として使用する。
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