研究課題/領域番号 |
25380847
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 東北福祉大学 |
研究代表者 |
吉田 綾乃 東北福祉大学, 総合福祉学部, 准教授 (10367576)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 自己制御 / ワーキングメモリ / プライミング / 自動的過程 / 統制的過程 |
研究概要 |
自らの認知や行動を望ましい状態に維持しようとする自己制御は、適応的な社会生活を営む上で欠かすことのできない心理プロセスである。また、人間の様々な認知活動を支えている動的な記憶システムであるワーキングメモリは、効果的な自己制御の遂行において重要な役割を果たしていると考えられる。そこで、本研究では、ワーキングメモリには容量制限の個人差があることを踏まえて、自己制御を支えているワーキングメモリキャパシティの役割を明らかにすることを試みた。 近年の研究から、自己制御は意識的過程だけではなく、意識を必要としない自動的な過程に依存していることが明らかとなり、達成目標をプライミングされた参加者は後続の課題において統制群よりも高い成績を示すことなどが示されている。本研究ではこれらの知見を踏まえて、非意識的な自己制御におけるワーキングメモリキャパシティの個人差の影響を検討した。ワーキングメモリキャパシティ高群と低群に対して、乱文構成課題を用いて、非意識的な目標(達成プライミング vs. 誘惑プライミング)をプライミングし、その後の課題遂行成績を比較した。分析の結果、誘惑プライミング条件よりも達成プライミング条件において課題遂行成績が高いという効果が、キャパシティ高群において認められることが明らかとなった。非意識的な自己制御においても、制御目標の活性化とその維持においてワーキングメモリが関与している可能性が示唆された。 プライミングによって発動する非意識的な自己制御行動は、これまで意図や意識を必要としない自動的過程に支えられていると考えられてきた。意識の構成要素のひとつであるワーキングメモリが、非意識的な自己制御行動を左右するという本研究の結果は、自己制御における自動的過程と統制的過程の協働について検討する上で興味深い知見であると考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は自己制御を支えているワーキングメモリキャパシティの役割を明らかにすることである。これまでに、ワーキングメモリキャパシティの測定、プライミング操作と課題の実施、事後調査という3回にわたる研究を実施した。その結果、ワーキングメモリと自己制御の関連性について一定の知見が得られたことから、おおむね順調に研究が推移していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
自己制御は、制御目標の「発動」、「制御」、「モニタリング」という3要素から構成される。これまでの研究は主に制御目標の「発動」に焦点を当てていた。今後は、研究結果の再現を測ると同時に、ワーキングメモリと制御目標の「操作」と「モニタリング」の関連性について検討を行う予定である。ワーキングメモリの測定方法、自己制御課題などの改善を行いながら研究を実施し、得られた成果をすみやかに公開していきたいと考える。
|