研究課題/領域番号 |
25380850
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
外山 みどり 学習院大学, 文学部, 教授 (20132061)
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研究分担者 |
山田 歩 滋賀県立大学, 人間文化学部, 助教 (00406878)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会心理学 / 社会的認知 / 帰属過程 / 認知バイアス / 利用可能性ヒューリスティック |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、さまざまな事象について説明を行うこと、特に因果的な説明を行うことがもたらす心理学的な影響について検討することである。 研究代表者外山は、平成26年度に2つの方向から「説明」の心理学的意味についてのデータ収集および理論的考察を行った。 まず1つ目は、社会的な話題になった出来事の中で、急激にその評価が変化したものに焦点を合わせ、説明の変化を検討することであった。ちょうど平成26年の前半にSTAP細胞作成成功の発表があり、その後あまり時間をおかずに実験結果に対する捏造疑惑が起こったので、これを題材にしてマスコミや一般人の反応に関するデータの収集を試みた。現時点で事件の真相には未解明の部分も多いが、Nature誌掲載直後の時点では研究者の個人的な側面についての言及が多く、捏造疑惑発生後には、理研の組織や研究体制の問題点が多く論議される傾向が見られた。 また2つ目の研究としては、前年度より行っている社会的事象の増減についての認知とその説明に関するデータ収集を続行した。データは現在分析中であるが、マスコミの報道が事件・事故などのネガティブ事象に偏っているため、世の中の動きについて悲観的な見方をする人が多く、またそれに対する説明はやや定型化している傾向が見られた。その他、直近2回の夏季・冬季オリンピックに対する事前予測と事後の説明に関するデータの分析結果を、国内・国外の学会で発表した。 研究分担者の山田は、最近の景観論争の文脈の中で、風景写真の美しさに関して、十分な熟慮的を経た上での判断と直感的な判断とを比較する研究を行った。その結果、熟慮に基づいた判断では、電柱や電線等の存在が評価を下げるが、直感的な判断では評価を下げないことがわかった。意識的に理由を吟味することの影響と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、説明の心理学的意味を多角的に検討することを目的としており、対象とする場面や研究方法も多岐にわたる。研究方法に関しては、実験的方法、質問紙調査、ウェブ等の検索データに基づく収集に分類できる。このうちで実験的方法と質問紙調査は従来から広く行われている一般的な心理学的研究法であり、その実施方法、分析方法にも習熟しているため、予定通りに進行している。ウェブによる情報収集は新しい方法であり、膨大な情報量の中から必要なデータを取り出すための工夫とテクニックが必要である。現在、大学院生、大学院修了者などの協力を得て鋭意努力中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、社会的な出来事に対する評価の変化と説明の変化についての研究と、「説明」がその後の判断や感情などの心理的過程に及ぼす影響に関する研究の2種類について、データ収集と分析を進める。 社会的出来事に対する説明については、上記【現在までの達成度】の欄に記述の通り、方法論的な精緻化が必要であり、ウェブ、ツィッターなどを通じての情報収集の方法について更に検討し、有用なデータ収集に努める。また「説明」がその後の心理過程に及ぼす影響については実験的な方法が適しており、研究代表者、研究分担者がそれぞれの題材を用いて研究を進める。 その他、昨年度までにデータ収集が終了している実験および質問紙調査データの分析を進め、考察を行う。さらに「説明」がもたらす心理的影響についての理論化と総括を行うために、関連文献の検索・調査を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノートパソコンなどの購入を26年度は見送ったこと、および研究協力者等の作業の関係で謝金の支払いが計画より少なかったことが主な理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
ウェブによるデータ収集等の作業を行う研究協力者、実験結果の整理・分析業務の補助を行う研究協力者の謝金、および図書や消耗品の購入などに使用する予定である。
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