研究課題/領域番号 |
25380854
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
坂本 真士 日本大学, 文理学部, 教授 (20316912)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 抑うつ / 新型うつ / 調査 / 素人理論 / パーソナリティ / 社会的認知 / 大学生 / 臨床社会心理学 |
研究概要 |
本研究は「新型うつ」について、パーソナリティおよび社会的認知の2側面からアプローチする。 ●パーソナリティからの検討:「新型うつ」の定義は明確に決められていない。また、「新型うつ」のパーソナリティ特徴についても、研究開始当初想定していた“拒絶への過敏性”の他に、他罰性、回避性なども指摘されている。よって拒絶への過敏性に絞り込むことなく、広く「新型うつ」のパーソナリティを記述するために、精神科医らによって記述された「新型うつ」の特徴から、パーソナリティ特徴をピックアップした。具体的には、2013年2月から遡り「新型うつ」に関する書籍(一般向けも含む)を調査して14冊をピックアップし、その中から「新型うつ」の心理的特徴と認められる部分を抽出した。これらをKJ法によって分類した。その結果、6つの特徴が認められ、それらは「対人過敏傾向」および「自己優先志向」という2つの大きな特徴にまとめられた。これらの概念的検討をもとに、54項目(5段階評定)の項目群を作成した。これを大学生756名に実施した。因子分析をした結果、6因子が抽出され、25項目からなる尺度が作成された。抑うつ尺度や「新型うつ」の対人的特徴と関連すると考えられる“仮想的有能感尺度”などとの関連を検討し、尺度の信頼性・妥当性の検証を行い、おおむね仮説に一致する結果を得ている。 ●社会的認知からの検討:「新型うつ」の発生にはうつの社会的イメージの改善があると指摘されていることから、一般の人を対象に「新型うつ」に対するイメージを問う研究を行った。具体的には、素人理論をもとにテキストマイニングの手法を用いて、「新型うつ」に関する一般の人たちの信念を調べた。大学生および会社員を対象に調査を行った。会社員のデータを現在分析しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「おおむね順調に進展している」と判断した。その理由は以下の通りである。 1:「新型うつ」のパーソナリティについて、当初の予定通り、尺度を作成し信頼性・妥当性の検討を行った。現在までの分析は仮説を支持しており、概ね良好な結果が得られている。 2:「新型うつ」の発症に関する理論的考察をした(社会心理学における「自己」の視点から理論化した)。これは当初の予定にはなかったが、「新型うつ」の発症に関して調べていく上で理論の存在は欠かせない。理論的考察については、論文にまとめ投稿した。現在、審査中である。 3:「新型うつ」の素人理論についても予定通りに検討が進められている。会社員からデータをとることができたのは大きな収穫と言える。 上記3点は計画通りかそれを上回る進展を示している。一方、次の点については計画取り進んでいるとは言い難い。 4:「新型うつ」についてもっている一般の人の知識については、検討が遅れている。これは、素人理論の調査において、「新型うつ」を知っていると答えた人の割合が想定より少なく、「新型うつ」に関する知識を問うこと自体が難しいと判断し、研究を止めているためである。
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね順調に進展しており、1年目同様に研究を進めていきたい。1年目にペンディングであった「新型うつ」の知識に関する研究についても、「新型うつ」関連の書籍が新たに出版されていることから、一般の人の知識も増えていると思われる。よって、時期を見て研究を実施したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
1:当初予定していた研究計画(「新型うつ」に関する知識を問う研究)がペンディングとなったため、その分が執行されなかった。2:研究代表者は、日本社会心理学会第54回大会(於:沖縄国際大学)へ当初参加を予定していたが、学内行事と重なったため、参加を見送った。よってその分が執行されなかった。 本年度は、ペンディングであった研究について時期を見て開始する予定であり、そこで執行することになる。また、研究成果が順調に得られていることから、海外での学会発表を予定しており、そこでも渡航費・滞在費などが必要となる。
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