研究課題/領域番号 |
25380860
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
北村 英哉 関西大学, 社会学部, 教授 (70234284)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 説得 / 潜在態度 / IAT / 閾下呈示 / 顕在態度 / 喫煙行動 / 態度変化 / 広告画像 |
研究概要 |
本課題は明示的、非明示的に示す説得情報が顕在/潜在態度に与える影響を検討するものである。2013年度は語句で与える説得メッセージを検討する予定であったが、先行してまず画像による効果を検討した。具体的には喫煙への反対を示すような画像を準備し、紙媒体に印刷した画像を示す閾上呈示と、画像の閾下呈示による2つの実験を実施した。実験1では印刷画像を示し、喫煙に対する態度を健康と対照させる形で紙筆版IATによる測定を行い、併せて顕在態度も測定した。喫煙の害を示す画像とポジティブな印象を与える喫煙に関わる画像の2種を対照のため用い、さらに事前呈示を行わない統制群を用意した。非喫煙者においては、ポジティブな画像呈示もネガティブな画像呈示も喫煙に対するネガティブな潜在態度を示したが、喫煙者においては、ポジティブ画像よりもネガティブ画像において喫煙に対する否定的態度につながった。また、統制群よりも否定的態度を示したことにより、日常喫煙している者にとってもネガティブな害を訴える画像呈示は喫煙に対する潜在態度を変容させる効果のあることが示された。一方、顕在態度においては顕著な効果が見られず、非喫煙者は喫煙者よりも一貫して喫煙に好意的であり、潜在態度は顕在態度で窺えない態度が測定可能であることが確認された。 実験2では、PCを用いて画像呈示とIAT測定を行った。視認できないような20msecの閾下呈示とマスキングを組み合わせ、ポジティブ画像、ネガティブ画像、中立画像を呈示する3条件を設けた。喫煙者である実験参加者は潜在態度においては中立群に比べ、ポジティブ画像群はより好意的な態度、ネガティブ画像群ではより否定的な態度が示され、閾下呈示の効果が得られた。顕在態度では顕著な効果が見られなかった。実験1は日本社会心理学会第54回大会、実験2はSPSP15回大会(オースティン)で発表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
潜在態度などさまざまな態度、認知について先行研究をレビューし、研究状況をまとめ、『認知科学』20巻3号に論文を掲載した。また、理論的な問題を「潜在態度」として『新社会心理学:心と社会をつなぐ知の統合』(唐沢かおり編 北大路書房)のなかの1つの章として執筆した。 実験では、当初25年度分計画であった××反対と主張する語の反復呈示の検討を行うことができなかったが、材料をよく吟味して××反対の趣旨を「喫煙反対」という重要な健康関連行動に結びつけ、画像による閾上呈示と閾下呈示の2つの実験を行うことにより、明示的/非明示的情報に叶う刺激条件を達成することができ、また、その両者の条件の情報が潜在態度/顕在態度の双方にいかに影響するかを年度内に検討することができた。説得情報が潜在態度に十分影響することが示された成果は重要であるばかりでなく、顕在態度には影響が現れにくいタイプの現象において潜在態度で変化を検出できたことは重要な成果であり、当初の研究目的に叶った成果が得られた。実験1は国内の日本社会心理学会で、実験2は2014年2月開催のアメリカ、オースティンでのSPSP大会で発表され、論文として執筆される用意もなされている。
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今後の研究の推進方策 |
広告を用いてポスターなどの刺激への接触回数に水準を設け、明示的接触群と非明示的接触群を用意し、各々の潜在態度/顕在態度を測定する。現在、具体的なポスターテーマの選定中であり、旅行先候補地などの情報への接触が態度に影響するか、当初の予定通りに検討していく計画である。東京方面でPCとアルバイト費を用いて6月頃実験を実施する計画である。7月中に結果を分析する。8月にSPSP16回大会に発表申し込みを行い、受理されれば2月のSPSP大会で成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は実験実施にあたり、自分で実験を行ったため、当初予定のアルバイト費が使われずに済んだため。 実験を効率的に行うため、関東地区でPC2台を用いて実験を行うことを計画している。次年度使用額を利用して、さらに1台IAT実施用のPCを購入する。
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