2015年度は予定されていたダブルジレンマの行動選択型実験を行った。同一グループの前試行の行動が参照できる条件12集団、参照できない条件12集団 (ぞれぞれ36名) を用いた。なお、実験は広島修道大学のブース実験室を用い、前年度に開発した社会的ジレンマ実験プログラムを用いてiPadで行った。実験室は実験参加者ごとに個室になっており、他の参加者を直接見られないようになっていた。社会的ジレンマ実験はは3人一組のグループで行われた。実験参加者は毎回20円の元手が与えられ、その20円をグループに提供するかどうかを決定した。実験には同時に2グループが参加し、毎回他のグループと提供額の比較を行い、提供額の低かったグループから高かったグループに20%の報酬が移動する (低いグループから報酬を没収し、高いグループに報酬として与える) 構造になっていた。実験の結果、実験の前半では参照可能条件の方が協力率が高く、進化シミュレーションで得られた理論的予測を支持していたが、実験の後半では参照可能条件における女性参加者で協力率が低下するというパタンが得られた。このパタンは理論的には予測していなかったため、今後なぜこうした性差が得られたのか、検討が必要である。なお、実験に予想以上の時間がかかり、また実験結果も必ずしも理論的予測通りではなかったため、予定していた調査は行うことができなかった。行動 (協力あるいは非協力) が前試行の多数派と一致した比率を求めると、参照可能条件で高く、実験参加者は他者の行動を参照して行動を決定していることが示唆された。しかしながら、行動の分散が少ない場合、毎回同じ行動をしているだけでも多数派との一致率は高くなるため、この点についてはさらに詳細な検討が必要である。
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