研究課題/領域番号 |
25380863
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福山大学 |
研究代表者 |
青野 篤子 福山大学, 人間文化学部, 教授 (70202489)
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研究分担者 |
澤田 忠幸 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 准教授 (50300447)
宇井 美代子 玉川大学, 文学部, 准教授 (80400654)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 男女平等意識 / 継承 / 母親 / 娘 / 語り / TEM / フェミニスト |
研究概要 |
本研究の目的は,男女平等の実現が困難な状況に鑑み,世代を超えた男女平等意識の継承を,母親と娘に対する量的・質的調査により明らかにしようとすることである。量的調査では,男女平等意識を測定する尺度を作成して,母・娘調査により継承に影響するマクロな要因を分析する。質的調査では,母・娘の「語り」を複線経路・等至性モデル(TEM)により分析し,個人的経験の影響や母娘相互の影響を探る。そして,最終的に,両者を統合して,男女平等意識の継承の様態を解明する。研究の初年度に当たる平成25年度は,男女平等主義尺度の作成に向けた資料収集と予備的研究を,研究協力者が中心となって進めた。また,男女平等意識の継承モデルを仮定し,男女大学生から見た母親と世間の恋愛観を比較するための調査を実施した。その結果,男女ともに同性の親の恋愛観をやや冷めたものととらえていること,女性の方が親と世間を対比的にとらえ自身の恋愛観を親より世間に近いととらえていることが明らかとなった。この研究は,「娘からみた母親と世間の恋愛会」というタイトルで日本心理学会と福山大学人間文化学部紀要に公表した。一方,12名の女性大学生に将来設計と母親からの影響についてインタビュー調査を行い,TEM図を作成することにより,母親からの影響を分析した。この調査により,娘の仕事優先の考え方には,母親の助言や支持的な態度が,家庭優先の考え方には専業主婦である母親の姿や無関心な態度がかかわっていることが推測された。この研究は,「男女平等意識の継承:娘の語りを通して」というタイトルのもとに日本社会心理学会で発表された。さらに,これらの女性大学生のうち,男女平等意識の強い人の母親3名にインタビューを実施し,TEM図から母娘の女平等意識の継承の様相を分析した。これは「男女平等意識の継承:母親の語りから」というタイトルで2014年日本社会心理学会に発表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
男女平等についての意見は多様であることから,男女平等意識を測定する尺度の作成には資料収集と項目選定に多くの時間を要するので,まだ準備の段階にとどまっているが,2014年度中には質問紙調査を確実に実施する予定である。インタビュー調査は一般大学生とその母親にほぼ予定通り行い,それらを分析して成果を一部発表している。本研究のテーマからみて,一般大学生とその母親より,フェミニスト(男女平等の考え方をもっている人)の母親とその娘における関係性に着目した方がよいという考えに至ったため,現在そのような参加者に依頼しインタビューを始めている(フェミニストの母親とその娘は4組予定している)。よって,3年の研究期間の初年度は,ほぼ予定通りの進捗状況にあると言える。2014年5月末にはこの年度の研究の進め方について打ち合わせをすることになっている。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度以降は,主に尺度の作成のための質問紙調査に力点をおいて研究を推進していく。男女平等意識に関する尺度は鈴木(1999)のものがよく用いられているが,現代にそぐわない項目もあり,より広範囲な実態を把握することのできる新しい尺度の開発が必要である。先行しているインタビュー調査の知見も参考に,公的領域(職場,学校,社会的活動など)と私的領域(家庭や私生活)における男女平等に対する意識・態度を測定するための尺度を構成し,母・娘ペアに対して調査を実施する予定である。そして,世代ごとの特徴を明らかにするとともに,男女平等意識の継承パターン(母娘ともに平等,母のみ平等,娘のみ平等など)とそれに影響を与える要因を検討する。これらのことを2名の研究分担者が中心となって進める。一方,フェミニストの母親とその娘に対するインタビューを継続して行い,それらを逐語録にまとめTEM図を作成するという作業を,研究代表者が中心となり研究協力者の協力のもとに進める。量的研究,質的研究のいずれにおいても,成果を随時,国際学会を含む発表の場で公開していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費で購入したPCが予定より安価だったためと,ソフトウェアを未購入であるため。 インタビュー調査にノートPCがある方が便利なので,今年度その購入に回したい。
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