1 組織集団において、「創造革新的なアイディアや計画が生成(創出)されても、それがその後の履行(実行、実現)に必ずしも結びつかないのはなぜか」(これを、本申請研究では新たに創造革新性パラドックスと名づけた)について、理論的、実証的に明らかにすることを目指している。 2 創造革新性の「生成」と「履行」と、集団特性および組織文脈特性との関係性を検討するために、企業組織従業員を対象とする調査を、特に履行段階を意識した新しい質問票を作成し26年度に実施したが、本年度も引き続き、そのデータの解析と検討を行った。特に、創造革新性パラドックス、そして特に創造的アイディア履行の抑制、促進要因について検討した。 3 その主な結果は、①創造革新性を認識している個人ほど、企画やアイディアを進める上で、自職場内や他部門の関係者との間に壁や溝があると、より強く感じており、創造革新性パラドックス生起の普遍性が示唆された。②創造的アイディアの履行において、職場内および他部門関係者との間の壁や溝の大きさは“抑制要因”として、他方、「共に見るもの」の意識化の高さは“促進要因”として働いていた。なお、「共に見るもの」のうち、会社レベルのそれは、職場や関係者レベルと比較すると明瞭な効果を持っていなかった。そして、③いずれの壁や溝の認知も、共同・一体を基調とするコンタクト(A、B)の割合が多いほど低く、対峙・分別を基調とするコンタクト(C、D)の割合が多いほど高かった。すなわち、共同・一体の姿勢が、関係者間の「共に見るもの」の意識化を促進すると考えられる。 4 また27年度は、職種間の連携が進行する看護職従事者を対象として、26年度に刊行した著書の基本をなす「壁」の構造と特性に関する調査研究を行った。対人および部署間の壁は、もともと存在するものではなく、「動くことで生まれる」、「仕事で交流をすれば生まれる」という特性があることを裏づけた。
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