研究課題/領域番号 |
25380866
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岩手大学 |
研究代表者 |
岩木 信喜 岩手大学, 教育学部, 准教授 (80341593)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 誤情報 / 学習 / 過剰修正効果 |
研究概要 |
平成25年度は、フィードバックの呈示方法に着目して、誤情報の生成が正情報の学習を促進する仕組みについて検討することを目標とした。この種の促進効果は、記憶の過剰修正効果に関する研究で報告されている。記憶の過剰修正とは、同じ記憶違いでも確信度が高く定着度合が強いと考えられる誤記憶の方がむしろ正情報のフィードバックによって修正されやすいことを指している。Kang et al.(2011)の研究では、一般常識問題を課したときに、回答を全く思いつかなかった(つまり、誤情報がない)試行よりもむしろ、誤情報を想起した試行の方が修正されやすかったのである。 まず、過剰修正効果の一般性を漢字読み課題を用いて検討した。その結果、漢字の読み方という語彙表象の音韻情報においてもその効果が明瞭に認められ、さらに、言語性ワーキングメモリの能力と相関することが新たに発見された(Iwaki, Matsushima, & Kodaira, 2013)。これは、誤情報が想起されたあとの情報処理が過剰修正をもたらす可能性を示すものであり、言語性短期記憶における誤情報の表象の影響を考慮する必要性を強く示唆する結果であった。 次に、一般的知識問題(例:世界で一番長い川は? ナイル川)を用いて、想起された誤情報の視覚的フィードバックが誤りの修正率に与える影響を検討した。この実験は現在進行中であるが、おおむねフィードバックのポジティブ効果が認められている。実験結果の一部は、全国学会で公表済みであり、データがまとまり次第、投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の目標は、誤情報の学習促進効果が存在するかどうかについて確認し、その仕組みを検討することであった。 剰余変数を統制するための複数の予備実験を計65名の参加者に実施し、おおむね適正の実験手続きを明らかにできた。 その後、誤情報のポジティブ効果を確認し、誤情報の想起後の短期記憶における情報処理が重要であることがわかってきた。 概ね順調に研究は推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、予定通り、想起した誤情報だけでなく、外部から与えられた誤情報についても学習の促進効果が認められるかどうかを主たるテーマとして検討する。そのために、一般的知識問題への回答方法として「多肢選択」を用いる。多肢選択課題では、正答のほかにルアーと呼ばれる誤情報を同時に呈示し、参加者はその中から正しいと思うものを選択する。このタイプの課題は、現場の学校教育においても普通に用いられるものであり、応用可能性という観点から見たときに重要な検討課題である。 また、問題内容の一般化可能性の観点から、漢字読み課題と自然科学的知識のような推論が求められる課題も検討対象に加える。これによって、より一層、応用時に必要とされる基礎知識を明らかにしたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
投稿論文の作成が間に合わなかったので、英文校閲料と投稿料を次年度に繰り越すこととなった。 計画に基づき、誤情報のフィードバックがその後の学習を促進する手続きを確定し、生成せずに与えられた誤情報についても同様の学習促進効果が生じるかどうかを検討するために実験を実施する。課題として対連合学習課題、漢字読み課題、一般的知識問題の3種類を用い、現象の一般性も検討する。これらの実験ために、実験補助者と参加者への謝金、および、消耗品を申請する。また、学会発表のための参加費と旅費も申請する。 結果をまとめて投稿論文を作成する際、英文校閲料と投稿料を申請する。
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