学習中に誤反応を生成すると質問文等の手がかりと連合する結果、正答の学習が阻害されると考えられてきたが、2009年以降、実際には促進されることが繰り返し報告されている。しかし、誤反応の生成とは独立にその反応の視覚的確認がどのような効果を持つのかはわかっていなかった。 本科研研究の2年目(26年度)には、対連合学習事態(2つの単語を対にして憶える課題)において、手がかりに対するターゲットの誤った推測の視覚的確認が、確認しない条件よりも「手がかり―ターゲット」対の学習を促進することが実証された。しかし、この課題は厳密には「誤った推測」であり、誤った知識といえるものではなかった。 最終年度である27年度は、誤った知識についても同様の効果が得られるかどうかを大学生を対象に集中的に検討した。語彙学習課題(漢字を読む課題)では、誤った読み方は正答フィードバックによって修正されるが、この修正率が誤反応のフィードバック(視覚的確認)によって促進されることが確認された。 語彙課題は学校教育における実際の教材と呼べるものであり、小学校から高校まで継続的に教育がなされている。また、この研究成果は、英語等の外国語教育、外国人の日本語教育への応用可能性も含んでいる。 本来、27年度は小学校において誤反応フィードバックの学習促進効果を検討する予定であったが、基礎的な実験に時間を取り、実施できなかった。今後は、この誤反応フィードバックの他の課題への一般化、小学生等への対象の一般化、教育課程に応用する際の手続きの最適化、という大きな3つの研究課題を遂行すべきである。
|