研究概要 |
本研究では、対人関係が広がり始める幼稚園年少から年中、年長にかけての3年間の縦断研究の中で、子どもの社会性の発達を縦断的に追跡し、それに対する母親、父親、保育者、仲間といった重要な他者との関係性がどのような影響を与えるのかについて、包括的な検討を行うことを目的としている。 1年目の平成25年度は、幼稚園に新しく入園した3歳児を対象に、母親の自尊感情、養育態度が子どもの自己評価にどのように影響するか検討を行った。対象は、1つの私立幼稚園に在園する年少クラスの幼児とその母親である。まず、母親47名に幼稚園を通して質問紙の配布・回収を行い、自尊感情、養育態度の測定を行った。因子分析の結果、自尊感情では「対人的自信の無さ」「効力感の高さ」「自己への過小評価」「自己嫌悪」の4つの因子が抽出された。養育態度では、「命令的しつけ」「自立尊重的しつけ」「保護的しつけ」「独立促進的しつけ」の4つの因子が抽出された。子どもに対しては面接調査を行い、40名に対して「対人的自己効力感」の測定を行った。さらに対人的自己効力感の平均点(33.35点)で子どもを高群(22名)、低群(18名)の2群に分け、併せて分析を行った。 その結果、母親の自尊感情と子どもの対人的自己効力感との間には関連は示されなかった。一方、母親の養育態度については、母親の「自立尊重的しつけ行動」の因子得点は、対人的自己効力感が高い群の子ども(M=.25, SD=.91)の方が低い群の子ども(M=-.33, SD=.83)よりも有意に高いことが示された(t=2.09, p<.05)。このことから、幼稚園年少児においては、母親が家庭で子どもの自立を尊重する態度をとることは、子どもが自分一人でも色々なことがやるという自信につながり、家庭だけでなく園での仲間関係における自己評価の高さにつながることが示唆された。
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