研究課題/領域番号 |
25380878
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
村瀬 俊樹 島根大学, 法文学部, 教授 (70210036)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 複数名称 / 実行機能 / 幼児 / ブロッキング / ラベル / 形容語 |
研究概要 |
実験1として、幼児は,1つの対象に対して複数の名称を使うことができるのかということについて、育児語と成人語,基礎レベルカテゴリー名と上位カテゴリー名の観点から明らかにした。また,複数名称の使用と他者の誤った信念の理解,実行機能との関係について検討した。4歳児、5歳児、6歳児56名が研究に参加した。成人語基礎カテゴリー名産出質問、育児語名称産出質問、上位カテゴリー名産出質問を行った。その後、他者の誤った新値の理解課題、DCCS課題を行った。その結果、成人語と育児語の複数名称を産出は6歳児でも45%程度であった。基礎カテゴリー名と上位カテゴリー名の複数名称を産出は、年齢とともに有意に増大した。基礎及び上位カテゴリー名の複数名称産出数とDCCS課題の得点との間には月齢を統制しての有意な正の偏相関が見られた。 実験2として、大学生を対象に、語と対象の連合に関するブロッキングの検討を行った。学習フェイズ1では,新奇語1と対象Aの連合を学習した。学習フェイズ2では,新奇語1および新奇語2と対象Aの連合,新奇語3および新奇語4と対象Bの連合を学習した。テストフェイズでは,新奇語2および新奇語4を提示し,参加者が対象Aを予測するか対象Bを予測するかを検討した。ブロッキングが生じているなら、参加者は対象Bを予測するはずである。大学生28名が実験に参加し、14名は新奇語1をラベルとして学習するラベル群、残りの14名は新奇語1を形容語として学習する形容語群とした。実験の結果、ラベル群ではブロッキングが見られたが、形容語群ではブロッキングが見られなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、幼児における1つの対象に対する複数名称の産出に関する研究と、幼児における音韻表象としての育児語の認識について検討する予定であった。複数名称の産出に関する研究は予定通り行った。 幼児における複数名称産出に関する実験の結果、育児語の産出が予想していたよりも少なく、幼児にとっての育児語の認識を検討することは再考の余地が残された。そこで、幼児における音韻表象としての育児語の認識を検討する前に、平成26年度に実施予定である幼児における語と対象の連合に際するブロッキングの検討に関する研究の準備を先に行うこととした。幼児におけるブロッキングの研究は少ないので、まず、成人を対象に、語の学習においてブロッキングが安定して生じるかどうかを確かめる必要があった。成人を対象としたブロッキングの実験を実施し、成人の場合は、ラベルの学習におけるブロッキングが安定して生じることが確認された。このことから、成人を対象にして行った実験を幼児向けにアレンジして、幼児を対象とした語の学習におけるブロッキングの検討を行う準備ができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、当初の予定通りに、幼児を対象に、語の学習におけるブロッキングが生じるのかどうかを検討する。また、平成27年度には、当初の予定通りに、幼児を対象に、語の学習におけるハイライト効果を検討する。 当初の予定では、ブロッキングの検討で、最初に学習するラベルが育児語的音韻のものの場合、成人語的音韻の場合をそれぞれ検討し、その差を調べることを考えていた。しかし、幼児において育児語に関する認識がそれほど強くないことがわかってきたので、当初の計画を変更し、最初に学習する語がラベルの場合、形容語の場合をそれぞれ検討し、その差を調べることとする。実際の語の獲得では、1つの対象に関連して、ラベルばかりでなく形容語の学習もなされており、ラベルと形容語の学習において競合が生じているのかどうかを検討することは重要な課題である。また、ラベルや形容語は日本語だけでなく他の言語でも見られる語であり、普遍的な語の学習メカニズムを検討する上でも、その学習過程の検討は重要であると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
残額が生じたのは、きりのいいところで使い切れなかったものに過ぎず、26年度分とあわせて使用したほうがよいと判断したためである。 26年度は、国際学会での発表、26年度に実施する実験の実験費、および言語発達に関する図書の購入費にあてる予定である。
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