研究課題/領域番号 |
25380878
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
村瀬 俊樹 島根大学, 法文学部, 教授 (70210036)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ラベル / 形容詞 / 競合 / 語彙獲得 / 幼児 / 言語的手がかり |
研究実績の概要 |
実験3aとして、幼児(3歳児、4歳児)に対して、既知対象2つを提示し、新奇ラベルと既知ラベル、新奇形容詞と既知ラベルを与えた時に、それぞれのことばがどちらの対象に言及しているのかを推測する課題を行った。また、これらの課題の達成度と実行機能との関係を見るために、白黒課題、DCCSも行った。その結果、3歳児、4歳児ともに、新奇ラベルと既知ラベルを与えた時には、既知ラベルはターゲット対象に、新奇ラベルはもう1つの対象に言及していると推測した。一方、新奇形容詞と既知ラベルを与えた時には、既知ラベルも新奇形容詞もターゲット対象に言及していると推測した。推測の仕方と白黒課題およびDCCSの得点との間に関連性は見られなかった。 実験3bとして、幼児(3歳児、4歳児)に対して、あらかじめ新奇対象Aに新奇ラベルを連合させ、その後新奇対象Aともう1つの新奇対象Bを提示し、さらなる新奇ラベルと連合済みの新奇ラベル、新奇形容詞と連合済みの新奇ラベルを与えた時の言及対象推測課題を行った。その結果、3歳児も4歳児も、ラベルが2つ与えられた場合は、実験3aと同様の結果だった。しかし、形容詞とラベルが与えられた場合、4歳児は、実験3aと同様に、連合済みの新奇ラベルも新奇形容詞もターゲット対象に言及していると推測したが、3歳児は、新奇形容詞はターゲット対象に言及していると推測したが、連合済みの新奇ラベルはもう1つの新奇対象に言及していると推測した。 以上の結果は、ことばと言及対象の連合には、競合の原理と言語的手がかりの考慮が働いていることを示している。ことばが形容詞であることを示すフレームで与えられると、2つのことばの競合は乗り越えられて同一の対象に言及すると推測されるが、ことばと対象の連合が弱いと競合の原理の方が勝ると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、幼児を対象に語の学習におけるブロッキングが生じるのかどうかを検討する予定であった。しかし、予備的に実験を行った結果、成人におけるブロッキングのパラダイムで幼児を対象に実験を行うと、反応が不安定になることがわかった。そこで、既知対象(実験の場で連合学習をする)と新奇対象を提示した状況で、既知ラベル(実験の場で連合学習したもの)と新奇ラベルを提示した時の言及対象を推測させることで、複数のラベルを学習する際の競合の生起について検討することとした。また、新奇形容詞と既知ラベルを提示した際には競合が生じるのかどうかを検討することとした。この方法は幼児に対する実験として有効に働くことが分かったので、幼児を対象とした語の学習における競合の生起のメカニズムを調べる方法は確立したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、本年度行った幼児に対する実験パラダイムを用いて、育児語と成人語をラベルとした場合には競合が働きにくくなるのか、育児語のプロソディーは競合の減少にどのように働いているのかを検討することとする。 また、幼児が、音韻表象として、特殊拍を含む音韻反復の形態を持つ語を育児語と見なしているのかどうかを検討するため、新奇の育児語的音韻形態(特殊拍を含む音韻反復の語)のラベルと新規の成人語的音韻形態のラベルが誰に向けられたことばであるのか推測する実験を行う。 これまでの研究成果をもとに、幼児が1つの対象に複数の語を獲得するメカニズムについて、特に育児語の果たす役割を中心に総合的に考察する。 研究成果について、国内および国際学会で発表するとともに、学術雑誌に論文を投稿する。
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