実験4では,大学生を対象に,1つの対象に対して複数の語を使って言及される場合,それらの語の間に競合が生じるのかを検討した。 実験4-1では,先行学習として,新奇対象Aと新奇ラベルXの連合を学習し,後続学習として,1)その対象Aと別の対象Bを提示し,そのラベルXおよび別の新奇ラベルYを提示した時,ラベルYの言及対象として,AとBどちらの対象が選択されるか(ラベル群),2)その対象Aと別の対象Bを提示し,そのラベルXおよび新奇形容語Zを提示した時,形容語Zの言及対象としてどちらの対象が選択されるのか(形容語群)を検討した。その結果,ラベル群も形容語群も後続して提示されたYまたはZの言及対象は,先行学習でラベルXと連合した対象Aとは別の対象Bが言及対象として選択された。 実験4-2では,実験4-1と同様の手続きを用いて,後続学習として,1)別の新奇成人語ラベルYを提示する場合(成人語ラベル群),2)別の新奇育児語ラベルZを提示する場合(育児語ラベル群)を検討した。その結果,成人語ラベル群も育児語ラベル群も後続して提示されたYまたはZの言及対象は,先行学習でラベルXと連合した対象Aとは別の対象Bが言及対象として選択された。 実験5では,幼児に対して動物名に付加されることが多い接尾辞「さん」を対象名に付加した場合,付加しない場合よりも生物的般化をする傾向が強まるのかどうか,また,その傾向の年齢による違いを検討した。その結果,年少児では,対象名に接尾辞「さん」が付加されない場合は,対象名の無生物的般化をしていたのに対し,対象名に接尾辞「さん」が付加された場合は,対象名の生物的般化をしていた。 一方,年長児は,接尾辞を付加しているかどうかにかかわらず,形も材質も色も見本と同じ対象にのみ名称を適用していた。
|