本研究は,育児語が多用される日本語獲得環境において,1つの対象に対して複数の語が言及していることを幼児がどのように理解しているのかを明らかにした。その結果,4歳から6歳の間に1つの対象に対して複数のラベルを産出することが発達し,そこには実行機能の発達が関与していることが示唆された。また,複数の語は1つの対象との対応付けにおいて基本的には競合するが,語が形容語として与えられている場合は,柔軟に言及対象は競合せず,1つの対象に言及していると解釈した。語が埋め込まれている言語的文脈情報の効果は,接尾辞「さん」の付与でも見られ,ラベルに接尾辞が付いている場合は動物名解釈をしていた。
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