研究概要 |
心理臨床家(日本4名、アメリカ合衆国8名)に対して面接調査を行い、専門家アイデンティティの生成と世代継承のプロセスと心理力動を分析した。日米共通の特質として、1.成長期に体験された内的なunfitness(自己不全感、自己と世界の折り合いの悪さ)に向き合い、それを解決していく心的過程と、心理臨床家というプロフェッションの深化が撚り糸のように作用し合うプロセス, 2. 青年期に専門世界に参入して以来、生涯にわたる研鑽の中で、先代から継承したものを深めつつ、独自の特質を生成していくプロセスが認められた。 伝統的工芸職人については、2名に面接調査とフィールドワークを実施した。伝統的工芸職人の場合は、親の専門世界を継承した人が多いが、青年期の職業選択や、その後の熟達のプロセスの途上で、育ちの中で馴染んだ世界と親(=師匠・親方)から受け継いだものと向き合い、葛藤し、最終的にはその専門世界を主体的に選び取っていくプロセスが見出された。 プロフェッションの生成と世代継承に関する心理臨床家・伝統的工芸職人共通の心理力動的特質として、師に体現される専門世界への同一化、内在化が認められた。また、専門世界への参入から自立するまでのプロセスとして、Erikson(1950)の精神分析的個体発達分化の図式に示された第1段階から第5段階までの心理社会的テーマが、専門家アイデンティティの形成・発達においても再び繰り返されることが示唆された。
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