研究実績の概要 |
研究の目的:心理臨床家と伝統工芸職人の専門的経験の世代継承性の特質とそのプロセスを分析する。 対象者および方法:日本とアメリカ合衆国の心理臨床家10名,日本の陶芸家・陶器職人 5名。個別の半構造化面接を実施した。 主要な結果:1.陶器職人の専門家アイデンティティ形成プロセスと,次世代の職人の専門家アイデンティティ形成(育成)プロセスの分析により,Erikson(1950)の精神分析的個体発達分化の図式に示された1段階から5段階の心理社会的課題が,再び経験されていることが示唆された。2. 心理臨床家の専門的アイデンティティ形成には,1.に加えて,育ちの中の内的不全感(unfitness)を解決したいという欲求と「飢えの感覚」が次元を超えて力動心理臨床家として昇華していくプロセスが認められた。 さらに,2017年度(本研究最終年度)は,本研究のまとめとして『世代継承性研究の展望:アイデンティティから世代継承性へ』(岡本祐子編著,ナカニシヤ出版, 2018年刊行予定)を編集した。本書は,諸外国と日本で1950-2016年までに発表された世代継承性に関する研究(論文題目に「世代継承性」または"generativity"の用語を含むすべての論文)を,領域別にレヴューし論評を加えて紹介することによって,世代継承性研究の展望を論じたものである。また日本発達心理学会第28回大会基調講演「21世紀のアイデンティティと世代継承性:その視点と課題』(講演者:岡本祐子)の内容を,加筆・再構成して掲載した。
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