研究課題/領域番号 |
25380883
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
鋤柄 増根 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (80148155)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | パーソナリティ検査 / 反応バイアス / 社会的望ましさ / 項目反応理論 / Big Five / 気質 |
研究概要 |
パーソナリティ検査などの自己記述式検査における社会的望ましさの影響を,項目反応理論のモデルから検討するために,多値回答の項目反応理論モデルであるGPCM(Generalized Partial Credit Model)の位置(困難度)パラメータを,BigFiveの60項目について753名分のデータから求めた。これらを項目の社会的望ましさのパラメタとする測定モデルを作成した。項目の社会的望ましさが加算的な影響を持つか,個人の社会的望ましさへの反応傾向と交互作用するのかを検討するために,各要因の主効果とそれらの交互作用を,項目反応理論の基本モデルの困難度パラメタを多次元に拡張することで,モデルに組み込んだ。このモデルをもとに,シミュレーションデータと既にある実データとを比較した。その結果,モデルが十分適切なものでなかったので,実データの再現が不十分であった。 上記のモデル化とは別に,社会的望ましさの影響を,気質の調査(乳児向けのECBQと前青年期向けのEATQ)でも検討した。ECBQの結果からは,社会的望ましさは,養育者の子供への期待などの信念に現れる文化差と関連があることが分かり,文化差の指標として利用できることが明らかになった。また,EATQでは,子どもと養育者とのペアデータから検討した結果,養育者の評定には,本人の評定より社会的望ましさが影響していることが明らかになった。つまり,文化差としての社会的望ましさは,より年齢が高くなるにつれてその影響が大きくなることを示唆している。さらに,質問紙に子ども自身が回答することで,社会的望ましさの影響を減少させる可能性も示唆している。ただし,子ども自身の回答が,自己認識の悪さなどで影響されないようにすることがその条件となるが,この点を克服することで,子ども用の質問紙についての新たな可能性を開くことになるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
項目反応理論のモデル化は現時点で,完成ではないことと,ファセット理論に基づくマッピングセンテンスの作成が,やや遅れている。しかし,子ども用の気質の調査の結果から,社会的望ましさの影響を少なくするような,新たな質問紙の作成の方向性のヒントが得られたことで,全体としておおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
マッピングセンテンスの作成と調査実施 Mischel & Shoda (1995,1998)のCognitive-Affective Personality System(CAPS)によれば,同じ状況(場面)であっても,個人が持つ社会的望ましさへの感度という特性によって,状況の解釈や意味という認知が異なる。その認知に基づいて個人は行動するので,状況による認知が異なれば,その個人の行動は状況によって,外からは異なって見えることになる。したがって,ある状況をどのように認知するか,具体的には「社会的に望ましい」「自分にとって重要である」などの状況の認知が一つのファセットになる。ファセット空間に行動を配置するためのマッピングセンテンスを完成させ,これを使ったこのパーソナリティ検査の本調査を行い,社会的望ましさのファセットが適切かどうか検討する。 項目反応理論に基づくモデルの完成に関しては,社会的望ましさがどのように交互作用するかを明確にしながら完成させる。主にシミュレーションを中心に行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
基金化された助成金でしたので,1万円未満下の残金は,そのまま次年度に繰り越すこととした。 1万円未満の残金ですので,2014年度の配分額と合算して,適正に使用する予定である。
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