研究課題/領域番号 |
25380887
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 獨協大学 |
研究代表者 |
田口 雅徳 獨協大学, 国際教養学部, 教授 (00360313)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 描線動作 / 比較文化 / 発達 |
研究概要 |
本研究は、異なる言語圏の幼児・児童を対象に図形の描画課題と書字課題を実施し、書字能力の発達に伴って描線動作に文化差がみられるようになるかを検討することを目的とした。また、利き手の違いによって描線動作に発達的差違がみられるかも検証する。 2013年度では主に日本人の被験児を対象として実験をおこなった。これまでの研究によって年中児23名(うち、左利き3名)、年長児23名(うち、左利き4名)、小学1年生13名、小学2年生7名(うち、左利き1名)のデータを得た。実験では円、三角形、菱形、五角形などの図形を利き手で一筆描きしてもらい、そのときの描画開始位置、および、描く方向(時計回り、反時計回り)を分析した。また、平仮名の書字課題をおこない、文字の書き順と書字された字形から各被験児の書字能力を評定した。本年度はとくに右利きの被験児の結果を中心に分析をおこなった。 まず、図形の描画開始位置について検討した。その結果、菱形の描画において描画開始位置に有意差がみられた。年中児では描画開始位置が菱形の4つの頂点に分散する傾向がみられた。いっぽう、年長児や小学生では菱形の上の頂点から描き始めることが多かった。また、小学生では円描画において最上部(時計の文字盤の12時の位置)が描画開始位置になることが多く、また五角形の描画でも小学生では上の頂点が描画開始位置になることが多かった。描画方向については有意な発達的差違はみられなかった。ただし、小学生においては円や五角形を上側(円では時計の文字盤の12時の位置、五角形では上の頂点)から描く場合、反時計回りに描く傾向がみられた。こうした描線動作は、日本人大学生でもみられることが先行研究で示されている。小学生は書字課題の得点も高いことから、書字能力の発達に伴い、次第に日本人特有の描線動作の特徴がみられるようになることが本研究結果から示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度の研究目的は、日本人被験児のデータを収集すること、および、ドイツ語圏での実験データ収集のため協力校を探すことであった。日本人被験児については、埼玉県内の園児、小学生および徳島県内の小学生を対象に実験をおこない、合計で66名の被験児からデータを収集することができた。この点で、おおむね順調にデータ収集が進んでいるといえる。ただし、予想通りではあるが、左利き被験児については母数が少なく、右利き被験児に比べてデータ数が不足している。 また、研究当初は小学1年生(7歳)までのデータを収集し、分析する予定であった。しかし、年長児と小学1年生のデータを比較したところ、描線動作の発達的変化が明確には現れなかった。そのため、小学2年生のデータも収集する必要が生じた。今後、小学生のデータをさらに20名ほど収集する必要があるとおもわれる。 ドイツ語圏でのデータ収集については、いくつかの協力校候補および研究協力者を得ることができた。今後の実験実施に向けて現在のところ手続きを進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように日本人被験児については、左利きの被験児のデータや小学生のデータが不足している。そのため、2014年度以降も引き続き日本人被験児に実験をおこない、データを収集する必要がある。現在のところ、2014年7~8月頃までに埼玉県、広島県、鹿児島県、長崎県などで実験を実施する計画である。こうした実験により、小学1~2年生については統計的検定が可能なデータ数を得ることができると考えている。 また、ドイツ語圏でのデータ収集については、2014年9月以降を予定している。オーストリア・グラーツ市、インスブルグ市での実験実施を計画中である。これらの実験によっても依然としてドイツ語圏の被験児のデータ数に不足がある場合には、ドイツ・ミュンヘン市およびデュッセルドルフ市で実験をおこない、データを収集する予定でいる(2015年2月以降実施)。以上の実験で得られたデータを分析し、2015年度以降に研究をまとめていく予定でいる。
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