研究課題/領域番号 |
25380889
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研究機関 | 目白大学 |
研究代表者 |
小野寺 敦子 目白大学, 人間学部, 教授 (40320767)
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研究分担者 |
河野 理恵 目白大学, 人間学部, 准教授 (40383327)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 食ライフスタイル / 中年女性 / 実母 / 実父 / 養育態度 / 料理時間 |
研究実績の概要 |
本年の研究では、中年期の娘とその実母における食ライフスタイルの関連性と親子関係についてを検討した。調査対象者は、保育園児をもつ母親161人、幼稚園児をもつ母親199人の合計360名と彼らの母親71名である。母親世代の平均年齢は37.8歳(SD4.6)、実母世代の平均年齢は65.6歳(SD6.4)であった。まず、食ライフスタイルに関する15項目について幼児をもつ母親と実母別々に因子分析を行った結果、両群ともに,料理好き因子・伝統重視因子・コンビニエンス因子・健康的食事因子が抽出された。両群の4因子間の相関係数を求めたところ幼児をもつ母親「料理好き」と実母「料理好き」との間に293*、幼児母親「伝統重視」と母親「伝統重視」との間に.237*、幼児母親「コンビニエンス」と実母「コンビニエンス」との間に.455***、幼児母親「健康的食事」と実母「健康的食事」との間に.336**という関連性が認められた。この結果から幼児をもつ母親世代と実母世代の食ライフスタイルとは強い関連性があることが示唆された。次に幼児をもつ母親からみた実父・実母との関係性を明らかにするために実父と実母別々に設定した10項目を因子分析し「父親との対立」「母親との対立」「父親への依存」「母親への依存」の因子が抽出された。これらの因子と幼児をもつ母親の食ライフスタイルとの関連について相関係数を求めて検討した。分析はフルタイム群118人、パート(不定期を含む)群62人、専業主婦群171名に分け実施した。その結果、専業主婦の母親の中で、コンビニやファーストフードなどの簡便な食事をする傾向が強い母親たちは、実父や実母に困った時にはまず相談し心の支えとしている傾向が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度では、大学生とその母親世代がとる食ライフスタイルとが関連し、それはまた親への感情とも関連していることが明らかにできた。今年度は、中年期の母親とその実母の食ライフスタイルの類似性を検討し、娘の父親・母親への心理的感情と食ライフスタイルとの関連を検討することであった。対象者は幼児をもつ中年期にある母親とその実母とした。その結果、母親が料理好きであると娘も料理好き、母親が伝統を重視した食事(例:おせち料理)をしていると、その娘も伝統を重視した食ライフスタイルを重視していることがわかった。その一方で、母親がコンビニエンスストアーやファーストフードを利用することが多いと、娘も日々の生活でそうした簡易で便利な食ライフスタイルを選択する傾向があることが認められた。このことから前年度同様、幼児をもつ母親世代とその実母世代の2世代間の食ライフスタイルにも強い関連性があることが示唆され、本研究の目的の1つである(食ライフスタイルは世代を超えて伝承される)は支持されたといえよう。また食ライフスタイルと親子関係とを検討したところ、専業主婦群の「コンビニエンス」得点と「父親への依存」「母親への依存」得点との間に5%水準で正の有意な関連性が認められた。現在は専業主婦として子育てをしている母親たちの中で、コンビニやファーストフードなどの簡易ですぐ手にはいる食事をする傾向が強い母親たちは、自分が親となった今も父親や母親を心の支えとしている傾向が示された。 平成26年度は子ども世代と親世代に対して食事場面を写真にとってもらう質的研究を研究分担者の河野理恵を中心に実施する予定であった。被験者の選定や食事場面を撮影するためのカメラなどの準備が整い、現在、研究を実施しているところである。以上のことから今年度の研究目的はおおむね順調に達成できたと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究目的は、韓国の大学生とその母親という2世代間の関係性と食ライフスタイルとの関係を検討することである。すでに韓国の延世大学のLee-SungMin先生の協力を得て300組の調査対象者を確保することができている。本調査を実施するにあたり平成26年の1月から2月にかけて目白大学に留学している韓国人留学生10名に日々の家庭での食事内容や近年の若者の食ライフについて面接調査を実施した。この面接によって近年の韓国の食ライフスタイルの一部を理解することが出来たといえる。この面接調査と平成25・26年度に実施した質問紙調査から得られた結果を基にして、現在、日本語版を韓国語に翻訳した質問紙の原案を作成しているところである。質問紙の内容としては、食ライフスタイルや1週間の食行動チェック、実父や実母との関係、親の養育態度、などの内容から構成する予定である。韓国での調査を実施した後は、三年間の研究成果をまとめ学会発表や論文投稿および書籍として刊行するなどの準備を始める予定にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度における中年期の母親とその実母の調査において幼稚園や保育園のご理解により、予想よりも少ない園で調査用紙を配布することができた。そのために被験者へのお礼・園へのお礼という謝金を節約することができた。また、調査データの入力や解析に際しては本学の院生の協力を得ることができ、業者に頼むよりもお金をかけずに作業を実施することができた。母親へのアンケート配布では、メール便を利用したので切手代金を抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度では、韓国の大学生とその母親についてを調査研究することになっている。それに際しての質問紙の韓国語への翻訳ならびに韓国に実際にいって調査をするための旅費や被験者へのお礼などに経費を使う予定である。さらに調査の実施後は平成25年度にすでに実施してある日本の大学生とその母親のデータとの比較を解析するにあたって経費がかかる予定である。さらに、この3年間で得られた貴重なデータを学会発表ならびに国際会議などに参加して発表する予定にしている。そうした発表に際しての準備や解析ならびに旅費などに経費を使用する予定である。
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