本研究では、前年度までの基礎的調査及び開発されたプログラムに基づいて、教職課程の学生が行うソーシャルスキル教育(以下SSE)の実践がどのような効果があるかを高校と中学校を対象に検討した。ネット上のトラブルへの対応を含むSSEを高校では道徳の時間においてTAとして実践を行い、中学校では総合的な学習の時間に授業者として実践を行った。その結果、どちらの実践に参加した学生もソーシャルスキルや自尊心に効果があることが明らかとなった。また、授業を通して全ての学生が、ネット上と対面上のコミュニケーションのどちらをも重視するSSEの授業を行う重要性に加えて、授業を通じて自身の社会性・道徳性を見直すきっかけとなり、教員になる意志の再確認と意欲の向上といった教師としての資質に対しても効果が認められた。さらに、教職課程の教育体系については、早期の学年段階から科目以外においてもSSEを学ぶ機会を設定すること、SSEの実践の参観をしてから実践に参加するといった学年進行による養成が、スキルの向上に効果がより高まることが推測された。以上より、教職課程の学生が教育カリキュラムの中でSSEを学び、その指導力と自身のソーシャルスキルを獲得する可能性が示された。
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