二分法的思考態度は,白と黒,善と悪のような2つのカテゴリに分けて捉える思考スタイルであり,このような思考スタイルには個人差が存在する。二分法的思考スタイルは素早い判断をもたらす一方で,ステレオタイプや攻撃性など特に対人関係面での問題をもたらす可能性もある。 また,このような思考態度は年齢に伴って変容する可能性も考えられる。たとえば攻撃性は年齢に応じて変化することが明らかにされており,脳のMRIスキャン研究では思春期以降でも発達変化が認められ,実行機能の発達変化では思春期から成人期にかけて向上し,その後低下することが指摘されている。 本年度では,二分法的思考の年齢変化と攻撃性との関わりを検討した。二分法的思考は年齢とともにやや低下する傾向が認められた。また,攻撃性とのかかわりでは,若年層では二分法的思考と攻撃性との関連は比較的大きく,高齢になると両者の関連が小さくなる現象が認められた。このことは,二分法的思考と攻撃性との関連に対して年齢が調整効果を持つことを示唆している。これらの研究結果は,第1により幅広い年齢範囲を調査対象として二分法的思考の機能を検討することの重要性を示唆しており,第2に二分法的思考そのものの年齢変化のみならずその意味が年齢とともに変化していくことを示唆している。そして第3に,このような示唆は二分法的思考の適応への影響についても,年齢とともに変化していくことを示唆するものであると考えられる。
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