研究課題/領域番号 |
25380894
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐々木 和義 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (70285352)
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研究分担者 |
堤 俊彦 大阪人間科学大学, 人間科学部, 教授 (20259500)
小関 俊祐 桜美林大学, 公私立大学の部局等, 講師 (30583174)
加藤 美朗 関西福祉科学大学, 公私立大学の部局等, 講師 (40615829)
門脇 千恵 関西看護医療大学, 看護学部, 教授 (50204524)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 自閉症スペクトラム障害 / 視線追跡 / 顔刺激 / 社会的場面 / 非言語性学習障害 / コミュニケーションプログラム / 社交不安 / 抑うつ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,アスペルガー障害をもつ児童生徒のコミュニケーション向上プログラム作成のための,神経心理学に関する知見を収集することである。 この目的を達成する手続きとして,研究1:AS 児の視線追跡に関する論文の展望研究,研究2:児童期におけるヒト顔刺激と社会的場面刺激に対する視線追跡を明らかにする実験研究,研究3:社会的場面刺激に対する視線追跡時の脳血流反応を明らかにする実験研究,研究4:ASD 傾向を持つ非言語性学習障害児の視線追跡と学級適応の関連を検討する介入研究を実施する。 研究1では,日本語文献の検討を中心に行ったが,ASD傾向の有無を視線追跡が目か口元では単純に判断できないことが示された。また,母親の働きかけを工夫することによって,ASD児の母親への関心が変化する傾向にあることが示された。 アスペルガー障害の児童の抑うつや不安を理解するための前段階的な基礎研究として,一般大学生を対象に社交不安,特性不安,抑うつに及ぼす拒絶に対する過敏性と自動思考の影響について検討を行った。「教育実習未経験群」84名,「教育実習経験群」82名をに質問紙調査を行った。その結果,実習未経験群の社交不安に対しては,拒絶に対する過敏性の「他者評価追従」および自動思考の「将来に対する否定的評価」の影響が大きいのに対し,実習経験群においては自動思考の「自己に対する非難」の影響が大きかった。 アスペルガー障害の児童の学級適応の関連を検討する介入研究の前段階的な研究として,高校生に対する集団認知行動的介入を実施し,抑うつに及ぼす影響性について検討を行った。本研究では2回の集団介入を実施し,1回目は認知的再体制化と問題解決訓練,2回目は認知的再体制化と社会的スキル訓練によって構成された。本研究の結果,対象者の抑うつ症状,否定的な認知などが減少し,肯定的認知や外傷後の成長が高まることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
視線追尾の実験課題においては,刺激の作成における問題が発生し,当初計画よりも遅れが生じているが,現在はその遅れを取り戻しつつある。また, DSMの改訂に伴って,アスペルガー障害という診断名での募集ができなくなったために,ASDの対象募集が困難となっている。適宜,一般の学生や児童生徒を対象とした研究を行いつつ,当初の目的となるスペルガー障害をもつ児童生徒のコミュニケーション向上プログラム作成に向けて準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
英文文献の展望の不十分な部分を補完する。視線追跡の検討については,2014年度に作成した妨害刺激のあるヒト顔刺激を用いて,実験を実施する。研究成果を包括し,最終的な研究課題である,アスペルガー障害をもつ児童生徒のコミュニケーション向上プログラム作成にむけた研究を遂行していく。具体的には,これまで得られた基礎的知見と,高校生を対象とした認知行動療法の有効性を考慮し,ASDをもつ児童生徒に対する支援プログラム実践し,試験的な実践を行っていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
アクセサリ-等の妨害刺激のついたヒト顔刺激の作成(写真・線画)の作成過程に遅れが生じ,データの取得に遅れが生じ,実験協力者とデータ整理者への謝金の支払いに残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
視線追跡のデータを取得し,謝金を支払う。5th Asian Cognitive Behavior Therapy Confference(南京),日本特殊教育学会,日本自閉症スペクトラム学会,日本認知・行動療法学会,日本心理学会,日本教育心理学会,日本認知療法学会などでの学会発表,および調査の実施のための予算を計上している。
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