本研究は、小中学校における学級経営の新しい教授法を開発することをねらいとしている。具体的には、学級の児童生徒が「学級力アンケート」と呼ぶ調査を主体的に実施し、その結果をレーダーチャート形式で可視化して表現する「学級力アセスメントシステム」を活用して、総合的な学習の時間において、「学級力向上プロジェクト」に取り組むことを通して自律的に学級力を向上させるためのプロジェクト教授法を開発することを目的とする。 学術的な特色は、学級力という児童生徒のための学級改善指標を定義し、学級の児童生徒の人間関係等の実態を児童生徒自らがアンケートで測定し診断することを支援するアンケートとアセスメントシステムを開発することである。先行研究の概観により明らかにしたように、学級力を児童生徒が測定・診断するシステムはこれまで国内外ともに開発されていない。さらに本システムは、プロジェクト教授法と連動することが独創的な点である。 3年間の研究成果は、「学級力向上システム」のプロトタイプ版の教育機能をより高度化し、さらに、統計的な妥当性と信頼性を向上させ、小中学校における実用化を行った。具体的には、まず、「学級力アンケート」については、質問項目の見直しと精選による尺度の再構成を、全国の小中学校20校での調査によって統計的に実施した。次に、「学級力アセスメントシステム」については、カラー化、エクセルによるマクロ・プログラミングの高度化、複数チャートの重ね合わせ機能の付加、リンクボタンの配置による領域別平均値と棒グラフの重ね合わせ表示機能の追加等を行った。さらに、「プロジェクト教授法」については、教師インタビューと研究授業のビデオ分析により、10領域30項目の教授法を整理することができた。 今後の課題は、学級力向上プロジェクトを推進する教師の学級マネジメント力を自己診断・改善する研修システムの開発である。
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