本課題研究の主要目的は、新たに「チーム援助のコーディネーター育成プログラム」を作成し、現職の小中学校教員および教職大学院生(現職派遣者)を対象に実施し、プログラムの実施前後の「チーム援助のコーディネーション能力」得点を比較すること、加えてプログラム受講者の受講後の感想コメントを分析することにより、プログラムの有効性を明らかにすることであった。最終年度の本年は、はじめに「チーム援助のコーディネーション能力評定尺度」を作成し、続いて「チーム援助のコーディネーター育成プログラム」の実施、および効果検証のためのプログラム試行実験を行った。研究の結果は、以下の通りであった。 1「チーム援助のコーディネーション能力評定尺度」の作成については、因子分析の結果、(1)チーム形成と成員への働きかけ能力(5項目)、(2)チーム会議のファシリテーション能力(5項目)、(3)専門的知識(3項目)の3因子構造の尺度(全13項目)が新たに作成された。 2 学校心理学の基礎理論学習とロールプレイ(模擬チーム援助会議)で構成された「チーム援助のコーディネーター育成プログラム」を作成し、2回にわたりプログラムを実施し、効果の検証を行った。第1回目は、首都圏A市の小中学校教諭(18名)を対象にプログラムを実施した結果、実施前に比べ実施後に「チーム援助のコーディネーター能力評定尺度」の3因子の全てで、統計的に有意な得点の上昇が見られた。また、第2回目は、筆者が勤務する大学の現職教員派遣の教職大学院生(8名)を対象にプログラムを実施し、受講後の感想コメントをKH-Corderのクラスター分析と共起ネットワークを用いて分析した結果、(1)児童・保護者理解の深まりや児童指導の様々な対応方法を知り、今後のコーディネーションに活かせること、(2)学校心理学の理論を今後のチーム援助実践にいかしたいとの意欲向上が示唆された。
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