研究概要 |
被害者と加害者とが交代する「循環型いじめ」に、児童・生徒の拒絶感受性が関連していることが予想される。そこで、拒絶感受性を測定する尺度の開発を行った。具体的には、小学校高学年児童約400人と担任教師、中学校を卒業したばかりの生徒約600人とその保護者、高校生約600人と担任教師を対象に調査を行った。小学校で収集した資料をもとにして拒絶感受性の尺度項目に関する信頼性・妥当性を検証し、その結果を平成26年度の日本教育心理学会総会で報告すると同時に、「教育心理学研究」へ投稿する。高校で収集した資料に関しても分析は完了し、平成26年度の日本グループ・ダイナミックス学会で報告する。中学校を卒業したばかりの生徒と保護者から収集した資料に関しては、高校入学後の追跡調査を平成26年度中に実施し、その結果と合わせて平成26年度中に解析を完了する。 「循環型いじめ」の生成メカニズムを検討するために、周りの生徒からの影響の受けやすさ(被影響性)・主体的行動力等を説明変数、「いじめ」被害を目的変数とした重回帰分析を、高校生約1,100人分のデータを用いて行った結果、被影響性のみが「いじめ」被害に関連することが示唆された。また、教育現場での聞き取り調査から、発達障害傾向のある児童・生徒が被害者となったり加害者となったりする「いじめ」が多いことが示唆された。そこで、海外の文献を中心に発達障害と「いじめ」被害・加害に関する資料収集を行った。さらに、約2,000組の保護者と中学校を卒業したばかりの生徒のデータを分析し、発達障害傾向と「いじめ」との関連を検討した。具体的には、保護者が評定した生徒の発達障害傾向をもとにして生徒を分類し、発達障害傾向と「いじめ」被害の関連を分析した。その結果、自閉症傾向を示す生徒が、「いじめ」被害を受けやすいことなどを明らかにすることができた。
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