今年度は,過年度の研究成果を報告書としてまとめる作業を実施し,さらに補足実験を実施した。実験の目的は,手や足といった効果器の違いによって,反応抑制課題(response inhibition task)での誤反応率が異なるのか,そこには加齢変化が存在するのかを検討することにあった。若年成人26名,高齢者39名を対象として,手と足を用いた場所弁別課題(location discrimination task)を実施した。実験の結果,年齢差の影響がみられ,高齢者では効果器の違いに関わらず,誤反応率が若年成人よりも高いことが分かった。また,若年成人,高齢者ともに,効果器の差が顕著にみられ,手で操作した方が,誤反応率の高いことが分かった。これらの結果から,手と足を用いた運動反応を抑制するメカニズムに関しては,年齢に関わらず,共通性が高いこと,手と足を操作する,大脳皮質上の感覚運動領域の差が,誤反応率に大きく影響していることが推察された。
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