研究課題/領域番号 |
25380906
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
堀田 美保 近畿大学, 社会学部, 教授 (90257981)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 対等性 / アサーティブ / アサーション / トレーニング / 効果研究 / 尺度 |
研究概要 |
本研究の目的は,アサーティブネス・トレーニング(AT)の効果測定に活用できる「対等性」尺度の開発である. これまでの効果測定は,トレーニング参加者の自尊感情,ストレスなど個人内の心理的要素の測定に限られてきた.アサーティブネスは自他尊重を土台とした他者との「対等な関係性」の構築を目指すものであるにも関わらず,その変化は測定対象としてとりあげられてこなかった.そこで,対等性概念の整理,それを踏まえた尺度構成を行うこととした. 本年度は,対等性概念の整理から着手した.具体的には,研究(1)ATのトレーナーを対象とした面接調査と,研究(2)関係における「対等性」をめぐる心理学的研究のレビューであった. 研究(1):7名のトレーナーを対象とした面接から,対等性に関するAT参加者の変化としていくつかの段階が見えてきた.それは,「自己主張の権利の目覚め→対等性と攻撃性の混乱(相手の権利への配慮の欠如)→相手への理解→自己責任の意識→問題解決志向→協働への志向」である.まだ仮説段階であり,今後,さらに面接調査を行い,検討を重ねたい. 研究(2):国立情報学研究所による論文情報ナビゲータ『CiNii』で「対等」という語をフリーキーワードとして心理学およびその周辺領域から論文を検索し,そこでの用法,論点の分析を開始した.女性と男性,親・大人と子ども,教師と児童・生徒・学生,医療現場での医者と患者,福祉現場でのケア提供者と受領者,労働者と使用者など,さまざまな関係に対して,「対等」という言葉がどう使われているか,内容分析を行っている.成果報告までには至っていない.また,心理学における「対等性」に関する研究の整理として,まずは当該研究のテーマであるATにおける現状を分析した.その結果,関係の対等性の研究が未開拓分野であることが確認できた.研究成果として「教育心理学研究」展望論文への掲載に至った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究期間内全体としての計画は,以下の通りである.①ATのトレーナー対象の調査研究・先行研究のレビューを通じて,アサーティブネスで目指される「対等性」とは何か,概念を定義する;②定義に沿った尺度を探索的に作成し,その信頼性と,特に,攻撃性との関連性という点で,尺度の妥当性を検討する.このうち,①「対等性概念の整理」がまずは25年度に実施する計画であった.その具体的内容が上述した研究(1)と(2)である. 研究(1)の面接調査については,最終的には15名ほどのトレーナーにインタビューを行う予定であり,うち8~10名分を25年度に実施する予定であった.結果的には,本年度7名のインタビューを実施した.面接日時の調整が難航したケースもあり,目標よりはやや少なめである.ただし,実施したインタビューについてはすでにテープ起こしをして,すべてテキスト化しており,その内容の整理は同時進行できている. 研究(2)のレビューについては,まだ,整理のためのポイントが確定しておらず,成果報告までには至っていない.また,心理学における「対等性」に関する研究の整理として,研究成果として「教育心理学研究」の展望論文の掲載に至った. 以上から,「やや遅れている」と自己評価する.
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今後の研究の推進方策 |
26年度は,まず研究(1)のトレーナーへの面接調査,残り7,8名分を前半に終了させ,そこから抽出できる「対等性」の諸要素を整理する.研究成果として,まずは,その結果を論文として形にしたい.また研究(2)については,夏季休暇中に論文としてまとめることを目標に分析を進める.さらに,当初から26年度に実施する研究として計画をしていた,トレーナーへの郵送調査の準備を進める.上記の2つの研究成果を踏まえ,「対等」という言葉に対して抱いているイメージや対等性に関する意見などについて質問紙を作成し,調査を行う.全国で活躍している約100名のアサーティブジャパン,トレーナー会員を対象に実施する. 以上の結果を踏まえて,26年度後半には,いよいよ研究③の「対等性」尺度の試作に着手したい.当初は2回の調査を年度内に計画していたが,本年度の遅れもあり,26年度には1回の調査の実施,分析までを予定する.よって,27年度に信頼性および妥当性を検討するための2回目の調査を実施することになる.以上の研究のために,旅費,謝金,質問紙作成や郵送にかかる諸費などが発生する.
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次年度の研究費の使用計画 |
上述したように,トレーナーへの面接調査が,スケジュール調整の難航により遅れている.そのために,当初申請した旅費および専門知識提供への謝礼が未執行となり,来年度に繰り越すこととなったまた,この遅れに伴い,録音したインタビュー内容のテープ起こしやデータ入力作業にかかる費用なども執行が遅れていることも理由である. 26年度の前半で残りの面接調査を終え,今年度の未執行分を使用する予定である.
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