研究概要 |
本研究では、原初的コミュニケーションにおける「円滑さ・自然さ」を分析・考察を試みるが、ここでは、2種の「心の理論」課題を用いて、発達による差異、及び他者性の相違による差異について検討した結果を報告する。 1.調査1-1:〔調査協力者〕幼児19人(年齢低群6人、年齢中群6人、年齢高群7人)。課題と手続き〕「心の理論」課題としては2つの課題、誤信念課題(cf.,Wimmer,&,Pernar,1983)と意図理解課題(cf.,Happe,1994)のそれぞれのアニメーション版を作成した(人間版、ロボット版の2種類)。※ アニメーション版は、Premiere Pro CS6、Anime Creator Pro8によって作成・実施した。併せて、言語応答課題を行った。 2.調査1-2:〔調査協力者〕大学生54人(平均:20.1歳)(男子22、女子32人)。〔課題と手続き〕課題=「心の理論」2課題(調査1.2共通)それぞれの人間版、ロボット版の2種類。課題のストーリーを場面ごとに記述した資料と解答用紙を配布。調査者が読み上げ、回答を順に記述することを求めた。 3.まとめ:幼児と大学生における各課題の全質問4項目の得点の偏りを調べたχ2検定の結果を照らし合わせると、他者が人かロボットかは度数の偏りに影響した、また、幼児と大学生の有意確率は概ね同傾向であった、ただ意図理解課題では他者が人のとき、大学生のみ有意傾向が認められた。そして、幼児では、2種の心の理論課題の通過時期、及びその傾向は、必ずしも同一とは考えられないが、発達差が示唆された。大学生では、人がロボットとの間で両方の「心の理論」課題通過得点で有意な差が示された。情報提供の質量により、「心の理論」課題の構造は、大人でも他者理解に影響することが考察される。今後は、幼児の後半に形成されるものは何なのか、それは大学生(大人)と共有されるものなのか、また理解のパターンなど検討を進めたい。
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