研究課題/領域番号 |
25380915
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
若島 孔文 東北大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (60350352)
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研究分担者 |
長谷川 啓三 東北大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70149467)
安保 英勇 東北大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (50250650)
佐藤 宏平 山形大学, 教育文化学部, 准教授 (60369139)
生田 倫子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 講師 (10386386)
板倉 憲政 岐阜大学, 教育学部, 助教 (20708383)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 包括的ストレス反応尺度 / 妥当性 / カットオフポイント |
研究実績の概要 |
本年度の研究では、災害時の特殊なストレス反応と一般ストレス反応を包括的に測定する包括的ストレス反応尺度 (Comprehensive Stress Response Inventory: CSI) の妥当性を検討し、カットオフポイントを設定することであった。調査協力者は、インターネット調査及び、自記入式質問紙調査に回答した2,136名 (男性1,264名、女性872名) であった。精神疾患のスクリーニング尺度であるK6とCSIとの関連を検討した結果、CSIとK6は中程度から強い正の相関 (r =.52~78) が示された。このことから、CSIは精神疾患につながるストレス反応と関連があり、併存的妥当性があることを述べた。カットオフポイントに関しては、K6及び、IES-Rを参考にして設定した。ROC分析の結果、一般ストレス反応では、スクリーニング目的で使用する場合は25点 (感度.854、特異度.730) 、研究目的で使用する場合は33点 (感度.889、特異度.862) 、災害時特殊ストレス反応では13点 (感度.879、特異度.867) をカットオフポイントとした。これらのカットオフポイントを組み合わせることで精度の高いスクリーニングができることが明らかにされた。 また、CSIを用いて、東日本大震災における津波被害が著しく激しかった自治体職員のストレス反応を縦断的に調査した結果、CSIにおける災害時特殊ストレス反応と自律神経症状の高さは、震災初期の状態と関連を示していることが明らかにされた。また、CSIにおける不安/緊張と不機嫌/怒り得点では、初期条件よりも現在の状況に起因したストレス反応を示していることが示唆された。 今後の支援の方向性に関して、1.初期状態と現在のストレス状況の二側面からメンタルヘルスに取り組むこと。2.災害時の特異的ストレス反応と一般的なストレス反応を判別できる測定尺度の必要性。3.業務と関連するストレスに対する環境調整を長期的なスパンで検討することなどの重要性が明白化された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度計画した調査はすべて終了しており、その成果の一部をいくつかの学会誌や大学紀要にて掲載された。以上のことから研究の遂行、論文投稿ともに、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる次年度では、主に研究実地計画に従い、成人のデータを増加するとともに、実際に、いくつかの行政機関(第2管区海上保安部、第3管区海上保安部、防衛省、その他)で、CSIを実施する。そのうえで職場環境や属性との関連を検討する。これらのデータを分析・解析を進めていく中で、各ストレス反応得点に対して、結果の解釈や適切な心理教育の内容が含まれた手引きを作成する。 以上の研究を通して、本研究が目指すCSIの作成やCSIの臨床応用に向けた総括を実施する。なお、研究成果に関しては、すみやかにその成果を学会発表、論文投稿を行い、最終的な成果を報告書としてまとめ、各関係機関へ配布を行う。また、公刊された書籍や論文は可能な限り閲覧可能にすることにより、なるべく多くの人々に対して研究成果の普及に努める。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度に、いくつかの行政機関(第2管区海上保安部、第3管区海上保安部、防衛省、その他)で、CSIの実施を始める予定であったが、自治体職員のデータが膨大であったので、多少の計画の変更が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度では、いくつかの行政機関(第2管区海上保安部、第3管区海上保安部、防衛省、その他)でCSIを実施する。未使用額は平成27年度請求額とあわせて、その経費に充てることとしたい。
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